仲間
登場人物
誠…主人公
慧…誠の親友
肇…求人の応募者
俺は近くにいる慧に助けを求めた。が、当の本人は全く気づいていない。
面接の前に合図を決めたじゃねえか!!! フル無視すんじゃねえ。
「一瞬、ごめんね」
肇君に声をかけて席を外し、慧に声をかける。
「おいてめえ合図フル無視すんじゃねえよこっちが気まずいだろうが」
慧は悪びれもせず答えた。
「ん? ああすまん。ソシャゲしてた」
「ふざけんじゃねえぞ」
「ごめんって。てかお前、俺に合図出したってことは相当気まずい雰囲気出したんだろ」
「うるせえ」
「ハイハイ、陽キャの俺様の出番ね」
俺はこいつのこういうところが嫌いだ。
「おまたせ、ごめんね肇君」
「いえいえ、大丈夫です。あれ、そちらの方は?」
「こいつ? ああ、もう一人の面接官だよ」
「そうですか。今日はよろしくお願いします」
良い子だなー。素直で本当に良い子だ。育ちの良さがうかがえる。何でこんな子が応募してきたのだろう。
「さて、じゃあ面接を始めようか。」
最初に口を開いたのは慧だった。あとは頼んだぞ。
「何でこの仕事に応募してくれたの? 」
「はい。一回死んだことがあるからです」
「……というと? 」
思わず慧が聞き返すと、肇君は苦笑いしながら答えた。
「信じてもらえないかもしれないんですけど、僕、七年前に死んでるんですよ。いや、死んだ夢を見たと言った方が良いのかな」
「ほう」
「で、気付いたらこの世界にいて、暇だったので求人サイト漁ってたらこの仕事の募集を見つけたってわけです」
「なるほど。死因は思い出せますか? 」
慧がこう言うと、肇君は少し困ったような顔をした。
「死因は…その…。言わなきゃ駄目ですか? 」
「いえ、辛い思い出であるのなら言わなくても大丈夫です」
「そうですか、良かった。」
彼は少し安堵したような顔をする。よっぽどこたえているのだろう。
「最後に、質問をします。この世界に違和感を、ちょっとしたズレを感じたことはありますか? 」
「はい。」
「そうですか。では、今日の面接はこれで終わりです」
慧がこう言うと、肇君は爽やかに「ありがとうございました」と言い、店から去っていった。もちろん、交通費は支払い済みである。
「さて、慧。どうする? あの子の合否」
声をかけると、慧は満足そうに言った。
「合格で良いだろ。きっとあの子は代理じゃないぜ」
「そうか。じゃあ、明日メール送っとくわ」
「うい。頼んだ」
俺達に新しい仲間が増えた。
次回もお楽しみに。




