死者代理
登場人物
誠…主人公
慧…親友
「じゃあ仮にここが死後の世界だとして、だ。なんでこの世界に俺の嫁がいるんだよ。あの人まだ死んでねぇぞ」
「落ち着け。これはあくまで俺の推理だが、おそらく、現実世界で死ぬまでは、この世界にその人間の代理がいるんだ。」
「代理? 」
「そう。代理は現実世界でそいつが死ぬまで、代理はそいつとしてこっちで過ごす。で、現実世界でそいつが死んだとき、代理は消え、本人にすり代わるんだ。」
「なるほど、その理論でいけば、この世界にいる嫁は嫁の代理ってことか」
「おそらくな」
「確信はあるのか? 」
「ああ。お前を見ていて考えが確信に変わったよ」
「どういうことだ」
慧はニヤリと笑った。
「お前、この前俺に何の仕事してるか聞いたろ」
「おう。それがどうした」
「俺、お前にその質問されんの二回目なんだわ」
何言ってんだこいつ。
「おいあからさまに引くんじゃねえよ」
「だってお前…」
「とりあえず聞けよ。お前が死んだのはつい最近だろ? だからそれまでこの世界にはお前の代理がいたんだ。俺が死んだのは二年前だから、その時にいたのはお前本人じゃなくてお前の代理だったんだ。ここまではいいか?」
「おう。」
「で、お前の代理は、俺に会った時聞いたんだ。「お前仕事何しとん」ってな。俺はこっちの世界では法律勉強したからな。弁護士になってた。そう答えたら代理は「あっそ」と言って、特に無関心だったよ。」
「なるほど。…そういうことか。」
「そういうことだ。」
二人揃って深いため息をついた。
慧は背伸びをしながらオッサンみたいな声をだす。
「あーもう。難しい話して頭疲れたわ~」
俺には、少し引っ掛かることがあった。
「…そういや俺、一つ気になることがあるんだよ」
「何? 」
「この世界では年取るのか? 」
「取らねえよ」
慧は食いぎみに答えた。
「お! じゃあ今は俺達同い年なんだな」
「は、何言って…。ってマジじゃねぇか」
「お前は二歳年上で、俺より二年早く死んだ。お互いに二十五歳で死んでるんだよ。運命みたいだな」
「やめろよ気持ち悪い」
そう言って慧は吐く真似をしてみせた。
死んでも変わんねえな、俺達。
次回もお楽しみに。




