天国と地獄
登場人物
誠…主人公
慧…親友
「お前、一回死んだよな?」
慧の動きが止まる。
「おい誠、何言ってるんだよ」
「2040年五月五日。お前は繁華街を歩いていたところ、
暴力団の抗争に巻き込まれ、流れ弾が頭に当たり、死亡した。」
慧は目を伏せ、小さな声で言った。
「何で知ってる」
やはり、こいつも俺と同じか。
「俺も似たような境遇なんだ。この前交通事故で死んじまってねぇ。目覚めたらここにいた」
「ってことはお前も…」
「そう、前の世界の記憶を持ってる」
しばらくの沈黙の後、俺達は目を見合わせて笑った。
「お前も死んじまったのかよ情けねえ」
「お前の方が先に死んだくせに」
しばし笑って、本題に入る。
先に口を開いたのは俺だった。
「ぶっちゃけ俺は死ぬとき、異世界に転生できるかもしれないと思ったんだ」
「何言ってんだお前。ラノベの読みすぎだろ」
慧は若干引いている。
「まあ聞いてくれよ。死ぬとき、これで人生が終わるとは到底思えなかったんだ。分かるか? まだ明日が、未来が俺には残っていると感じてならなかった。例えるなら、そう、寝る前の感覚に近かった。寝る前には、当然明日も起きて、一日を過ごすんだろうと感じるだろ? あれと一緒なんだ」
慧はしばし考えて言った。
「なるほど、言わんとしてることは分かった。だが俺は死ぬとき、これから地獄に堕ちるんだと感じた。特に生前悪を働いたわけではなかったけど、地獄に堕ちる気がしたんだ。」
「というと? 」
「いや何、もしかしたらここは死後の世界で、言うなればここが地獄なのではと思うんだ」
「仮にそうだとして、なんで俺達は地獄にいるんだ。特に悪事はしてないだろ」
「だがここは天国でもないだろ」
「それはそうだけど…」
ああ、どんどん分からなくなってきた。
次回もお楽しみに。




