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私の愛したきみ

作者: 雪傘 吹雪

私の愛したきみは

誰も知らないところに行ってしまって

それっきり、帰らなくなった


きみの残り香は

風が吹きさらった


私は

この穢れて、汚れきった手を伸ばし

「行かないで」

それしか云えなかった


もっと出来たことがあったかもしれない


きみとちゃんと面と向かって話し合えれば

きみの声をしっかり聞いてあげれば

きみを突き放さなければ

きみを抱き締めてあげられたのなら


私はきみを失わずにすんだのかもしれない


神は無情にも

きみを連れて行ってしまった

どんなに祈ったって

きみが戻って来ることはないみたいだ


きみが私を求める目が嫌いだった


きみが求めるものを

私は既に持っていなかった

私は狂人になりたかった

狂人になれば

きみ自身を嫌いになれる気がしたから

私はきみを忘れて

きみも私を忘れて


それでよかった


それでよかったのに……


きみはどうしてそんなにも

哀しい声で、私の名を呼んだの?


穏やかに生きてくれたなら

それよかったんだよ


私はここで生きるから

きみは遠いところに生きていてよ

化け物の居ない、そんなところ

あるか知らないけど

そんな桃源郷で静かに息をしていてほしかった


けれども、きみはそんな甘美な生を拒んだ


きみは

馬鹿だったのかもしれないね

少し考えれば分かることなのに

きみはわざわざ自身を危険な身に晒したんだ

光を殺したんだ

だから、行っちゃったんだ


知ってる


分かってるよ


きみは馬鹿でも

愚図でも

他人でもないって


まぎれもない

私の大切なきみだって


そして、きみにとっても

それは多分、同じだったんだね

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