63 ニギハヤヒ・リリィ
武蔵の国。
埼玉県所沢市。
瞬間移動!
ストンッ、
地上に降りた。
ここは北野天神社……、
別名・物部天神社だ。
ふたりは神馬の前に立つ。
ヒミコン、
またもや大興奮!
「わああっ、懐かしいっ!
生前、参拝に訪れてますっ」
Ⓢシップ、
「そのようだな」
シュッ、
シップは右手の人差し指を立てた。
ぱっ、
鳳凰柄の扇子を開く。
そっと口元を隠す。
囁くように咒を唱えた。
ぶわ~ん…………、
空気が揺れた。
…………?
高貴な佇まいの男性が現れた!
ヒミコンの脳内フル稼働!
目の前の男性を観察する。
……わあっ、リリィって?
男性だったの?
ふむふむ……、
年齢は三十前後くらい?
白いマントを羽織っている。
大きな勾玉の首飾り、
古来からの神服を身にまとう。
立ち居振る舞い、雅やかだ。
つぶらな黒色の瞳、小さな唇、
長い黒髪、後ろで緩く束ねている。
肌はツルンッ、滑らかだ。
キリリッ、凛々しくて精悍だ。
だけどそれ以上に、キュートだ。
優雅な仕草、淑やかな微笑み、
豪壮さと愛らしさを兼備している。
まさにユニセックス!
魅惑的な男性だ。
シップが紹介する。
「こちらは……、
ニギハヤヒ・リリィ。
未來王の弟子のひとり、
我ら四人衆の親友でもある」
「…………?
…………!!!!」
あわっ? あわわわわっ……?
ヒミコン、息を呑む。
フルフルフル……、小刻みに震える。
ヨロリフラリ……、後ずさりする。
Ⓢシップ、
「ん? どうしたのだ?
いつもに増して挙動不審だぞ?」
ヒミコン、
がばっ……!
九十度に腰を折り曲げた。
「はっ、はっ、はっ、
初めましてっ!
ひっ、ひっ、ヒミコンと申しますっ!」
リリィは微笑む。
「はい。
ニギハヤヒ・リリィです」
Ⓗヒミコン、
「やはり……? あなた様は!
呪術師の祖! ニギハヤヒモリヤ!
あのっ、あのっ、あのっ!
ずっと、ずっと、ずっと!
憧れておりました! 私の推しでした!
まさかまさか……!
ここでお会いできるなんて……!
感激ですっ! 光栄ですっ! 嬉しすぎですっ」
ぶわあっ……!
ヒミコンの瞳から涙が溢れ出た。
リリィは恐縮する。
「まあ?
それはそれは……、ありがとう。
友人たちからは、リリィと呼称されています。
ヒミコンもそうお呼びくださいね?」
「はっ、はいっ!
りっ、リリィッ!
きゃっ、呼んじゃった♡
僥倖ですっ!
感謝感激雨あられですっ」
「ふふ……、
面白い御人だ……」
「キューン♡♡
リリィはめちゃくちゃ素敵です!
カワユイですっ!
声は鈴の音のようですっ!
私の想像では……、
モジャモジャのムッキムキ!
モッサモサのオジサマだと思っていました。
ギャップにビックリです」
「私……、
生前のヒミコン、
存じ上げておりますよ?」
「えええっ?
うそっ? なぜっ?
どうしてっ?」
Ⓛリリィ、
「ここには……、
数回訪れていますね?
それから他にも……、
上野国の貫前神社、
公野市の磐船神社など、
参拝に訪れておりましたね?」
Ⓗヒミコン、
「私は西東京市の出身です。
所沢市はほど近いので射程圏内なんです!
ここ物部天神社はもちろん、
貫前神社、磐船神社、
御祭神は物部に所縁がありますよね?
魔導師・呪術師推しにとって、
特別な聖地ですっ」
Ⓛリリィ、
「確か……、
府中の大國魂神社……、
そこにもお見えになっていましたね?」
「武蔵の国の六所宮……!
それこそ何度もお邪魔しました!」
「真剣に祈る姿……、
度々、お見掛けしました。
その必死の形相……、
印象に残っておりました」
「あわわっ!
お恥ずかしいです。
生前はそれこそ! あっちこっちで!
ウィザードにしてください、などと……、
無謀極まりない祈願をしておりました」
「ふふふ……、どうやら?
無謀なる願い……、
叶ったのですね?」
「はいっ、そうなんです!
なんとなんと!
叶えていただけちゃいましたっ」
シップは頷く。
愉快気に笑う。
ぽんっ、
リリィの肩に手をのせた。
「なあリリィ……、
皆もリリィに会いたがっていた。
これから、ヒイカワに行く。
一緒にどうだい?」
「ヒイカワ、か……。
そうだね、行こうかな?
私も皆に会いたいからね?」
ふわり、
リリィはほころんだ。




