62 五百羅漢
藍方星。
赤い作務衣のヒミコン、
せっせと雑用をこなしている。
今日も裸足で駆け回っている。
スッ、
シップが現れた。
「やあやあ精が出るね?
魔術訓練かな?」
「はいっ!
気合い百倍ですっ!
寝る間も惜しいくらいですっ」
「ふむ……、
どうやら息抜きが必要だな。
ヒミコンよ……、
遊興に出掛けないかい?」
「遊興……、ですか?」
「用事があって人間界に降りるのだ。
そこでいくつか寺社巡りをするのだが、
一緒にどうかね?
トレジャンの合格祈願を兼ねて……、な?」
パアアァッ!
ヒミコンの表情、
キラリンッ、輝いた。
「合格祈願……? 寺社巡り……?
うひょーっ!
行きます行きますっ!
是非是非っ、ご一緒させてくださいっ」
「ふむ、乗り気のようだな?
では出発するぞっ」
「イエーイッ!
やったあっ」
「…………」
ザバアッ……!
シップとヒミコン、
共鳴の泉に飛び込んだ。
……ストンッ!
ふたりは地上に降り立った。
小江戸川越。
「わわあっ、菓子屋横丁!
あわわっ、時の鐘っ!
生前に何度か訪れたことがありますっ」
ヒミコン、ウッキウキ!
完全に観光気分だ。
きょろきょろ、
レトロな街並みを見渡す。
逸る気持ち、抑えきれない。
Ⓢシップ、
「懐かしいかい?
今日は気楽に過ごして良い。
人型のベール結界を纏わせている。
我らの存在……、
人間には認識感知できないはずだ」
Ⓗヒミコン、
「ああ……、ホントだ。
誰とも視線、交わらないです。
周囲から見えていないのですね?」
「そういうことだ」
「あっ、そういえば……、
今日の目的地はどこですか?」
Ⓢシップ、
「まずは、ここだ」
小仙波町。
喜多院。
「うわあっ、喜多院っ!
久々ですっ!
まずは本殿参りですね?」
Ⓢシップ、
「いや……、
こっちが先だ」
シップとヒミコン、
五百羅漢尊の前に並び立つ。
「さあヒミコン、
目を閉じよ。
五百羅漢尊に祈りを捧げよ……」
「諾っ」
ヒミコン、
僅かに俯いて祈りに入った。
ザザザザザァァッ…………、
清新な風が吹き抜けた。
Ⓢシップ、
「目を開けよ……」
…………!
ヒミコン、
驚愕して目を瞠る。
ぐるり……、
五百羅漢尊に取り囲まれている!
すべての石像の視線……、
こっちに向いている!
……オンネオ……、
オンネオ……、オンネオ…………、
シップは囁く。
高速で真言を唱える。
五百羅漢尊にテレパシーを送信した。
ズザザザッ……、
五百羅漢尊、
一斉に平身低頭する。
未來王に甚深たる畏敬の念を示す。
そして厳かに告げる。
≪……すべて諾、
すべて仰せのままに、
そのようにお申し伝え下さい。
そして太郎さんをはじめ、皆々の学業成就、
心を込めて祈り奉ります。
万全の態勢で臨めますように……
培った実力、発揮できますように……
積み重ねた努力、報われますように…………≫
ピカァァッ!
五百羅漢尊、
光背を輝かせた。
うんうん、
シップは頷く。
端的に返答する。
「では諸々、頼む。
我らは本殿参拝後、立ち去る」
五百羅漢尊……、
シップに問いかける。
≪これからどちらへ?
座敷童にお会いにならないのですか?
喜多院の座敷童は不動明王の化身です。
もし相まみえれば、
立身出世という謂れがあります……≫
ヒミコン、瞳を輝かす。
「喜多院の座敷童……?
会ってみたいです!
由緒深いですっ」
≪幼少期……、
太郎さんはわらしに会っております……≫
Ⓗヒミコン、
「トレジャン家族……、
ここを訪れていたのですねっ」
Ⓢシップ、
「まあ残念だが……、今日は時間がない。
座敷童との対面は次の機会だな。
これからリリィと約束があるのだ」
五百羅漢尊、
穏やかな笑みを湛える。
伝言を依頼する。
≪……リリィ!
私たちもお会いしとうございます。
どうかくれぐれも……!
よろしくお伝え願います…………≫
Ⓢシップ、
「うむ、承知した」
…………?
ヒミコン、首を傾げる。
……リリィ?
それって?
どちら様……?




