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51 甥の末路②

 藍方星。

 露見の泉。


 甥・ブンタのストーリーは続いている。


 ついに事件は起こった。

 イジメの標的(ターゲット)だった男子生徒、

 理科実験室で首吊り自殺した。

 

 ジュン、

 享年・十七歳。

 ジュンは苦学生でありながら成績優秀、

 学費免除の特待生だった。

 素朴で努力家、

 正義感の強い好青年だった……。

 

 生前、

 ジュンは苦しんでいた。

 横行しているイジメ、許せなかった。

 仲良くしていた友達……、転校した。

 一番の親友……、自主退学した。

 

 ジュンは職員室に出向く。

 担任教師に訴えかける。

 イジメ問題、解決を求めて相談する。


 しかしなぜか、

 取り合ってもらえない。

 担任教師、薄ら笑いを浮かべる。


 「残念だなあ……、

 イジメの事実、確認できなかったよ。

 ジュンは特待生だったよな?

 特待資格……、

 取り消されたくないだろう?」


 「えっ?」


 「お前の学費……、

 学園が負担しているんだぞ?

 せめて進学実績に貢献するんだ」


 「そんな……?」


 「いいか?

 そもそもイジメは無かった。

 カースト上位者とは仲良くしろ。

 簡単なことだろう?

 彼らに媚びて、従えばいいんだよ。

 世渡り上手になれ。

 愛想笑いの練習……、しないとな?」


 ジュンは絶句して立ち尽くす。

 失望して落胆した。


 ……イジメの事実は意図的に隠蔽(いんぺい)されている。

 学校側は被害者を助けてくれない。

 むしろ加害者側の味方だ……。


 ブンタは次なる標的(ターゲット)を発表する。

 クラスメイト、戦々恐々だ。

 選ばれたのは……、

 ジュン、だった。


 ……ジュンは五人家族。

 小学生の弟と妹がいる。

 両親は零細(れいさい)自営業、

 決して裕福ではない。


 学費は免除されている。

 それでも私立は金がかかる。

 ハイブランドの制服、海外への修学旅行、

 派手な年中行事など、

 家計はいつだって火の車だ。

 

 ジュンはいつも心苦しかった。

 活発で食べ盛りの弟と妹がいる。

 それなのに……、

 いつだって節約ばかりだ。


 だからこそ、

 未來目標を定めていた。


 ……必ず、恩返しする。

 この有名進学高から、

 国立大学にストレート合格する。

 大学入学後、学費は奨学金支援を受ける。

 在学中、たくさんアルバイトをする。

 大学卒業後、

 安定収入を得られる大手企業に就職する。

 そうして家計を助ける。

 僕が家族を支える……!

 

 目標があるから頑張れる。

 (つら)いはずの受験勉強、苦痛ではなかった。


 しかし卑劣なイジメ、苛烈さを増す。

 際限なくエスカレートしていく。

 それはまさに地獄の日々、

 もはや犯罪だ。


 ジュン、

 藻掻きながらも葛藤する。


 ……働きづめの両親に心配かけたくない。

 もしもイジメの事実を知ったならば、

 何をも(いと)わず助けようとするだろう。

 転校、退学、引っ越し……、

 躊躇(ちゅうちょ)なく視野に入れるはずだ。


 そういう親なのだ。


 まずは生活、極限まで切り詰めるだろう。

 そして昼夜問わず、働くはずだ。

 親戚中に頭を下げて借金するかも知れない。

 返済に追われて奔走(ほんそう)する……、

 そんな痛々しい姿……、ありありと目に浮かぶ。


 ジュンは決意する。


 ……弟と妹、まだ小学生だ。

 今以上の困窮(こんきゅう)

 避けなければならない。

 家族の未來、

 僕が奪ってはならない。

 決して中退しない。

 イジメは耐え忍ぶ。

 大切な家族のために……!


 ジュンは心の中で叫ぶ。

 自分に言い聞かせる。


 ……逃げるな、逃げるな、逃げるなっ……!

 耐えろ、耐えろ、耐えろっ……!


 しかし事件は起こった。


 理科実験室でジュンが死んでいた。

 首吊り自殺だった……。


 清廉な孝行息子を失った。

 家族の嘆きは凄まじかった…………。

 



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