49 生前の真実③
藍方星。
露見の泉。
プツンッ……、
水面の影像……、
消えた。
ヒミコン、
呆然と立ち尽くす。
魔導師シップ、
語りかける。
「わかったかな?
つまり生前のヒミコン……、
雛子は被害者だった。
マコから受動的攻撃を受けていたのだ。
重ねて告げる。
お前の妹はマニピュレーターだ。
しかも悪質な『先天性』である」
ぽつり、
ヒミコンは呟く。
「先天性……?」
シップは頷く。
「マニピュレーターとは、
潜在的攻撃性操縦者という意味を持つ。
異常なまでに自己愛が強い。
プライドが高く見栄っ張り。
幼稚な嘘つき。
厚かましく無遠慮である。
中でも先天性は一層悪質である。
自分は特別な人間であると思い込んでいる。
崇められるべき人間だと勘違いしている」
ゲイルは補足する。
「マニピュレーターの特徴……、
周囲の関係性、見極める能力がある。
相手の弱点、探り当てる技量がある。
強者に取り入ることに長けている。
良く言えば、状況判断に優れている」
シップは嫌悪感を露わにする。
「奴らはアグレッシブだ。
昼夜いとわず、己の利益のために動きまわる。
密やかに周囲を巻き込み利用する。
実に計算高く悪賢い」
Ⓖゲイル、
「強者に対して、媚を売って取り入る。
弱者に対して、罵倒し見下す。
言葉巧みに信用させる。
あげく、簡単に裏切る。
常に優位な側に味方する。
しかし不利となれば手の平を返す。
実に低劣愚鈍、あざとく狡猾である。
恥ずべき人種類型である」
Ⓢシップ、
「こいつらは善に見せかけた悪である。
陰険陰湿でありながら善人を装っている。
平然と悪辣手段をやってのける。
そこに一切の反省はない。
性根は腐りきっている」
ヒミコン、言葉を失う。
唇を噛みしめる。
Ⓢシップ、
「ヒミコンよ、よく聞きなさい。
先天性は成長につれ、さらに心が捻じ曲がる。
姑息さに拍車がかかる。
周囲は知らぬ間に操縦されてしまう。
関わる者たちすべて、被害者になり得る」
Ⓖゲイル、
「岩沼シンゴ……、
後天性である。
岩沼は妻・マコによって操縦されている」
ヒミコン、
声を震わせ問いかける。
「つまりマコが……?
先天性マニピュレーターが操縦して……?
夫を後天性マニピュレーターへと変貌させた……?」
ゲイルは頷く。
「その通りだ。
岩沼マコ……、意地悪で意地汚く執念深い。
愛、金、称賛……、異常なまでに欲している。
夫の出世のために、
羨望の的になるために、
特別な存在になるために
姑息アグレッシブに活動している」
シップは淡々と告げる。
「マコは常習的飢餓状態である。
常に欠乏、渇望している。
先天性マニピュレータは手段を選ばない。
この先、強欲大罪を犯すだろう……」
Ⓖゲイル、
「そしてその被害、子孫まで及ぶ。
類似人格が形成される可能性が高い。
両親のパーソナリティが根腐れしているのだ。
当然、子供の性根は捻じ曲がる。
母親同様、父親同様、
傲慢破廉恥へと成長する」
Ⓢシップ、
「つまりは子々孫々、
生怨霊製造機になり得るのだ。
このまま放置すれば、
岩沼一家は周囲を巻き込み攪乱させる。
望まぬ悲劇の連鎖が起こる。
被害者はひたすらに増え続けるだろう」
ゲイルは問いかける。
「これらすべてを踏まえて問う。
三月十日……、
裏陰の処罰、実行できるか?
躊躇いなく、
引き金を引けるか?
情を捨てきり、
ラストオイルを噴射できるか?
ヒミコン……、お前の妹に!」




