4 藍方星の住人
大気圏を突き抜けた遥か彼方。
優美典麗なる星。
兜率内天院が輝く。
ぐるり、
内天院を囲む数多の星々。
それらを総称して。
兜率外天院と呼称する。
欲界・色界・無色界。
兜率の天は欲界に属す。
理論上。
地球人の感覚に近いといえる。
しかしながら。
煩悩欲望、極めて薄い。
六欲天のひとつではあるものの。
色界に最も近い。
外天院の小惑星のひとつに。
深い蒼色の藍方星が在る。
この星には。
未來王の四大弟子、
魔導師四人衆が暮らしている。
その名を。
シップ、ゲイル、クロス、イレーズという。
地球には。
有象無象の生命体が生息している。
しかし。
藍方星の住人は一桁しかいない。
藍方星は青金石を主成分とする。
ラピスラズリの星である。
そこの住人の魔導師は。
人間を激しく嫌忌して拒絶している。
だからなのか。
底冷えするような寒々しい空気が漂っている。
しかしその一方に。
穢れ無き透明感があった。
藍方星には四つの城が建ち並ぶ。
それは魔導師四人衆の居城である。
贅を尽くした建造物。
希少な宝石からできた豪奢な城。
どこか冷たくて死相を漂わせている。
大金持ちになって成り上がりたい!
そんな願望を抱く者にとって。
絢爛豪華な屋敷に住まうこと。
それは叶えたい夢でもあるのかも知れない。
それがいかに。
コスパが悪くても。
機能性が劣っていても。
他者に対する優越感……。
他者からの羨望……。
その観点を重要視するならば。
最上の優良物件だといえるだろうか?
しかし実のところ。
彼らはゴージャスな城になど興味ない。
無尽蔵なる環境下。
欲するものなど何もない。
魔導師四人衆。
未來王から直々に選ばれた精鋭である。
聡明叡智なエキスパートである。
突出した才能を有した天才である。
ウィザードと一口に言っても。
その可視域は世間でいうところの。
陰陽師や呪術師とは違う。
それらとは大きく懸隔している。
むしろ。
想像力豊かな幼子が思い浮かべるような。
魔法使いやスーパーマンに近しい。
彼らの魔術には。
大袈裟な身振り手振りなど不要である。
ヘビーな任務でさえ、指先ひとつで貫徹する。
星のひとつやふたつ、瞬く間に木っ端微塵だ。
凄まじいまでのエネルギーを有している。
彼らは知識と技能を極限値まで磨き上げている。
あらゆる僥倖と厄災の予兆を感知する。
極等級を有した魔導師。
現段階では四人しか存在しない。
次なる極等級が現出するのは。
二百数十年後だといわれている。
それゆえ。
彼らの存在価値は希少である。
比類なきカリスマ、そう称しても過言ではない。
人知を超越した素因材なのである。
魔導師四人衆。
容貌はパーフェクト。
ポテンシャルは底知れない。
完全無欠のスペシャリストだ。
得体の知れぬ魅力に惹きつけられてしまう。
そんな彼らの欠点は……?
敢えて言うなら。
極端な二面性かも知れない。
魔導師四人衆の大脳作用。
それは徹底的に冷々無情だ。
彼らは。
未來王に永遠の忠誠を誓っている。
無条件に遵従している。
しかしその他に対しては。
侮蔑して辛辣だ。
身の毛がよだつほど冷厳極まりない。
虚偽・虚飾・虚構など。
空々しいものは通用しない。
邪な悪人間、骨の髄まで嫌悪する。
そんな彼らの弱点。
それは未來王だ。
彼らはとにかく王には弱い。
王のことが大好き過ぎる。
ひれ伏すのはただひとり。
未來王にだけ畏敬跪拝する。
首尾一貫して。
王の下命にしか従わない。
王から求められれば掬いの任務にも徹する。
地球上の生命体の願いを叶える。
濁りを取り除き、癒しを与える。
安寧をもたらす。
同時に。
苛烈極まりない処罰を喰らわす。
彼らこそが。
表陽裏陰の聖業を担っている。
六道輪廻の根幹を動かしている。
数多の神々、霊獣たちは。
華麗奔放な彼らの虜である。
心酔して仕えている。
過激二面性に魅了される。
際立つスペシャリティに感嘆する。
慄いて平伏す。
そして。
未來王への甚深たるリスペクトに共感する。
親近感を覚えるのだ。