21 イレーズのレクチャー①
藍方星。
露見の泉のほとり。
赤い作務衣のヒミコン。
ギンギロリッ、
水面を睨みつける。
鬼の形相で水中を覗き込む。
それはもはや。
お馴染みの光景である。
…………?
どうやら今日は。
いつもと少し様子が違う。
なぜか。
ヒミコン、百面相だ。
険しい顔をした。
……かと思えば。
デレ~ッ、表情が緩む。
ニヤ~ッ、笑う。
不審である。
……スッ、
イレーズが現れた。
「あのさ……?
さっきから何なの?
そのだらしない顔……、
思い出し笑い?
厭らしいね?」
「…………!」
(うぎゃ、ヤバい)
スチャッ!
ヒミコンは慌てる。
即座に姿勢を正す。
「すっ、すみません!
先日の裏陰魔術……、
思い出してしまって!
鬼神と霊獣……、
素敵すぎて!
ぐふっ、ぐふふふっ…………
あっ! なにかご用命ですか?」
「あ、ああ……、
気味悪くて忘れるところだった。
あのさ?
物凄ーく、不本意なんだけど……、
シップの命令だからさ?
仕方なく来たんだよ」
「はあ……?
それで? 何でしょうか?」
「だから、さ?
あんたの指導に来たんだよ。
レクチャーしてやれって……。
(シップがやればいいのにさ)
とりあえず何か質問ある?
無いよね?
無ければすぐに戻るからさ。
じゃあ…………」
ぱあぁっ!
ヒミコンは瞳を輝かす。
嬉々として返答する。
「うあぁっ、待ってくださいっ!
ありますっ!
質問、山ほどありますっ!
それも!
極等級・魔導師のレクチャーなんて……、
(最強かよっ)
大歓迎ですっ」
ゲンナリ……、
イレーズは意気消沈する。
一方。
ヒミコンは満面の笑顔だ。
……宇宙一の天才からのレクチャー!
イエーイ!
最高すぎる。
……あらら?
イレーズの眉間、
深~いしわが寄ってますね?
ですが。
申し訳ございません!
見なかったことにいたします。
あらら?
あからさまにガッカリしてますね?
さすがに心情お察しします!
ですが。
華麗にスルーいたします。
このチャンス……、
逃すわけには参りません!
「イレーズ先生!
(できればたっぷり)
ご指導、お願いしますっ」
「ふう……、(仕方ない)
それじゃあ講義、始めるよ?」
……まずは基礎から。
天の組織図・六世界。
天界三世界、冥界三世界。
併せて六世界と呼称する。
六世界は遊星の集合体。
各界層ごとに細分化されたものが集まって組成されている。
天界三世界とは。
元素・神界・人間界。
冥界三世界とは。
黄泉界・魔界・霊界。
ここ兜率天は。
元素と神界の狭間に位置する。
未來王時代。
六世界は繋がっている。
くるり、
ひとつの球体になっている。
つまり、境界がない。
天界の神霊獣、魔界の幻妖霊獣……。
縦横無尽に飛び回っている。
天界の神々と魔界の神々……。
そのすべては。
選ばれし者・『チョーズン』だ。
ちなみに。
未來王と魔王は親友だ。
新時代・未來王時代は。
すべてが数値化されている。
死没後は。
算出された最終数値に基づいて自動転送される。
それは黄泉界。
もしくは霊界だ。
現今。
天界・冥界は協力関係にある……。
ヒミコンは感嘆する。
Ⓗ
「わわっ、
未來王時代、凄すぎっ!
天界の未來王。魔界の魔王。
神々と魔神。神霊獣と魔獣。
対極が相まみえているなんて……!」
Ⓔ
「ま、未來王時代だからね?
だけどさ?
もしもこの時代が終わったらさ?
すべてはジ・エンド。
もしも未來王が大宇宙から消え去ったらさ?
エンドレス地獄の始まりだよ」
ゾゾゾッ……、
ヒミコンは戦慄する。
ブルルッ……、
悪寒が走った。
……続いて。
天地開闢から神々の起源。
神道的役割、八百万の神々。
四大文明、世界の神話。
司教、福音、秘跡、異端。
無神論、偶像崇拝、末法思想。
儒教、孔子、孟子。
仏教、阿羅漢、法門、転生。
陀羅尼陰陽道。
眷属の役割。
などなど!
淡々、端的。且つ、合理的。
一縷の隙すら無い講義だ。
ヒミコンは感激しきりだ。
Ⓗ
「すごいっ、わかりやすいっ!
さすが宇宙一!
超天才!
ブラボーッ」
Ⓔ
「うるさい黙れ。
じゃあ次は、
呪詛の危険性。
死没後のジャッジメントについて」
そうして。
まさかのノンストップ!
三百分が経過した。
イレーズは肩をすくめる。
大げさにため息をつく。
気だるげに天を仰いだ。
「ああ、もう限界……。
喋りすぎた。
低レベルの相手、疲れた……」
ヒミコンは深々、頭を下げる。
精一杯の礼を伝える。
「もうっ、最高過ぎましたっ!
感謝感激雨あられですっ!
ありがとうございましたっ」
…………。
(数秒の沈黙)
Ⓔ
「あのさ?
できれば三年位……、
あんたとは喋りたくない。
……じゃあね」
すうっ……、
イレーズは消え去った。
イエスッ!
ヒミコンは大満足だ。
力いっぱいガッツポーズする。
……ああっ、サイコーッ!
合間の雑談までも面白かった!
ウシシシシッ……、
魔導師四人衆の裏話、
少しだけど、聞くことができた。
その雑談の内容は次回……、
おたのしみに!




