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第二章 幕間-無念-

地下への階段を降りる中、さっき見た夢のことを思い出した。

暗闇の中で、恋詩の声で喋る異形が、私を責め立てる夢。それは夢にしてはあまりにハッキリとしていて、妙に生々しさを訴えかけてくる感覚が未だに脳裏に刻まれている。


あれから何度目か数え切れない、恋詩がこの世に居ない実感が私を襲う。

昨日まであんなにハツラツとしていた恋詩が。

ただ好奇心に胸を踊らせていた恋詩が。

取り憑かれたように私達を置いて駆け抜けた恋詩が、私の前から姿を消した。


いや、身体の隅々まで切り落とされ、阿鼻叫喚と悶え、叫び続けた姿を、夢に出てくる程度まで私の目に焼き付けながら、この世を去った。そういう意味では、姿を消したとは言えないかもしれない、なんて。


そんな気の狂った冗談が思い浮かぶ程に、私の精神は擦り切れていた。



夢の中で恋詩が投げ掛けた言葉を今再び噛み締める。

恋詩が、本当にそう思いながら息絶えたのだとしたら。

恐怖と痛みに苛まれる様を背に、ただ逃げ続けた私を恨んでいたのだとしたら。

返す言葉が見つからない。

自分を正当化することが出来ない。


仮に逃げずに恋詩を庇うことが出来たなら。


恋詩の背後に忍び寄る影に、早く気付くことが出来たなら。


無事に逃げ延びて帰ることが出来たら、私の全て捧げても弔おう。

せめて、恋詩はこの時を生きていたことを刻もう。


今はこう言ってあげることしか出来ない自分を憎みながら、私は一段一段、階段を下っている。

その先に、無念を晴らす在り処を求めて。

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