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終焉のパラティリシ  作者: わふ
一章 狩人達の宴
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十七話 遭遇の後に

 

「このモノレールは無人運転だったはずだ。システムが生きてりゃ、そろそろ次の駅に着く頃合いだろうな」

「そう。なら、一応確認しに行きましょう」

「だな」


 二人は先頭車両に行き、運転システムを確認した。


「……よし、大丈夫そうだな」


 これで無事に次の駅に着く。そう思いながらそっと胸を撫で下ろす恭也。


「恭也! 見て!」


 その傍らで昭慧(シャオフェン)はディールを見て歓喜に溢れていた。


「あん? 電波が戻ってんな……さっきの魔物がこの車両を圏外にしていた原因だったのか?」

「そうじゃないかしら。詳しい事は分からないけど」

「多分あの魔物を中心にそういう空間を歪ませるような魔法を仕掛けてたんだろ。俺達以外の乗客を乗らせずにしたのもそのせいだ」

「だとすれば、ここには魔族本体がいない事になるわね。安全な場所から高みの見物をしてるのね」

「ああ、でも……」


 恭也は停車する予定の駅のホームを遠目で眺めながら言った。


「何で、俺達だけがこのモノレールに乗れたんだ?」

「それは……多分これを仕組んだ奴の意図じゃない?」

「そんな事は分かってるっての。俺が言いたいのは、何で俺達がその魔族の意図に選ばれたんだって話だ」

「そんなのあたしに分かる訳ないでしょ? でもまぁ、気になるのは確かね。あたしが狙い……な訳ないだろうし、貴方が何処かで魔族から恨みを買ったんじゃない?」

「ま、かもしれねぇな……」


 恭也はそう同意したが、何かの引っ掛かりを感じて心の底から納得する事は出来なかった。

 それから間もなく停車駅、商業区中央駅へとモノレールは辿り着いた。

 とりあえず二人はCSに連絡を取り、十分程でそれが到着した。


「なるほど、それは災難だったっすねー」


 二人の元に現れたのは、ピンク髪の少女と無精髭を生やした男性という、ちぐはぐな組み合わせのバディだった。

 その二人のうち、現在恭也達から事情を訊いているのが少女の方、CS隊員B級の七瀬(ななせ)桃果(もか)だ。


「しかし驚いたっすよ。通報者がまさか今私達の間で話題のあの狩生隊員だったとは。数々の魔族絡みの事件を解決して、最年少のA級へとなり、その上一部からは――」

「待て。それ以上言うな」


 と、七瀬の言葉を恭也は強引に打ち切った。


「あれ……もしかして恭也、異名で呼ばれるのが恥ずかしいの? 確かに小っ恥ずかしいそれって言ったけれど、別に気にする必要はないと思うわよ?」


 昭慧(シャオフェン)の説得は届かず、恭也は『いや……まぁ……』と言葉を濁す。


「――何はともあれ、負傷者がいないのは不幸中の幸いだった」


 そう話の流れを軌道修正したのは、もう一人のCS隊員。七瀬桃果のバディでB級の(つじ)伊織(いおり)だ。


「あ、辻先輩。そっちは駅員さんから話は訊けたんすか?」

「ああ。だが、案の定何も知らなかった」

「ま、そりゃそうっすよね。人払いが成されてたみたいっすからね。とにかく、ここまで手の込んだ事をする魔族っす。A級の狩生先輩には余計なお節介かもしれないっすけど、くれぐれもその魔族に気を付けてください。ほんと、何してくるか分からないんで」

「わーってるって。俺を狙ってる理由も、どんな魔族なのかも、次いつ仕掛けてくるかも分からねぇからな。充分注意を払っとく」


 七瀬の忠告を軽い口調で受け止める恭也を窘めるように辻がこう言った。


「それだけじゃない。お前、片桐司の件にも一枚噛んでるんだろ。しかもレッドブラック絡みだと聞く」

「へぇ、良く知ってるじゃねぇか」

「あの生真面目を装ってる胡散臭い刑事――東郷から話を聞いた。それよりも、奴ら――レッドブラックの動向にも注意しろ。あれは偃月市の裏社会を牛耳る正体不明の組織、油断すれば逆に喰われるぞ」


 彼のそれは、気だるそうな声と真剣な口調が混ざりあっていた。


「何かあれば俺達を頼れ。お前への警察の要請は、CSへの要請として正式に受理されているらしいからな」

「んじゃ今回の魔族の件、それとあいつが死ぬ前に受け持っていた正体不明の魔族殺しの件、そっちに回して貰って良いか?」

「今回の件は言われずとも俺達の担当になるだろう。魔族殺しの件は上に掛け合っておく。彼が亡くなった今、多分通るだろ」

「助かるぜ。今回の事件の犯人――司を殺した犯人を暴くのに集中したい」

「任せるっす。狩生先輩は片桐君の事件を解決してあげてください」


 一応話は纏まり、七瀬と辻はモノレール内を調べてからその場を後にした。

 昭慧(シャオフェン)と共に残された恭也は、既にもう日が落ち切った空を見上げた。


「ったく、とんだ面倒事に巻き込まれちまった。今日はもう捜査は無理そうだな……」

「なら、今日は引き上げる? その片桐……司? って人が殺された事件の」


 隣に立っていた昭慧(シャオフェン)がおもむろにそう言った。


「……やっぱ、気付いてるか」

「まぁね。あれだけ色々と話していれば。で、あたしはそれを手伝っても構わないのかしら?」


 彼女の言葉で、紆余曲折を経ながら話の流れは、当初のそれへと至った。


「…………」


 少しの沈黙の後に続く恭也の言葉は――。


「そーだな、人手が増えんのはありがたいしな」


 了承を意味する返答だった。


「ええ、任せなさい! やるからにはきっちりやるから!」

「ま、あんまり期待しないでおく」


 意気込む昭慧(シャオフェン)を尻目に、恭也は素っ気のない反応を示した。


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