1000円カットにひとこと言いたい。
先日とあるミュージシャンが「1000円カット」に関するSNS投稿をし、ちょっと話題になっていた。
簡単に言うと、見本として提示した写真と実際の仕上がりとのあまりの違いぶりを投稿したのだが、自分は正直面白かったし、そのミュージシャン自体も大好きだ。
だが、その投稿に「技術者を馬鹿にしている」という批判が来たり、実際に美容師の方も怒りの声を上げたりしたようだ。
この件について知人の美容師に聞いたところ、クオリティどうこうの前に、1000円カット店は一人10〜〜15分程度で切らないと利益が出ないらしい。
美容師さんというのは想像以上に過酷な仕事とは聞いていたが、1000円カットもその安さの裏に、大変な営業努力があるようだ。
ちなみに自分も1000円カットを利用しているが、そういえば以前、こんな親子客がいたことを思い出した。
女の子がお父さんに付き添われ、自分の隣で切ってもらっていたのだが......。
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美容師さん(以下 美)
「はいできました~~、大人しくしてて偉かったねえ」
女の子(以下 子)
「ありがとう」
付き添いの父(以下 父)
「ありがとうございました!」
美「どうでしょうか、短めだけど可愛くなってると思うんですが……」
父「うーん、もう少し短くなりませんかね」
美「え、これ以上短くすると男の子になっちゃいますよ。お母さんに怒られちゃうんじゃ……」
父「そっすかあ、嫁がなんて言うかなあ……前回はこれくらいだったんですよね」
スマホの画面を見せる父
美「これを最初に見せてくださいよ~~(若干憤慨)」
父「すんません、とりあえずもう少し短く、可愛さと短さの間くらいで」
美「間くらいって……(女の子に向かって)ごめんね、もう少し我慢してね、なるべく早く終わらせるからね」
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そう言って再び、美容師さんは切り始めた。心のため息が聞こえてくるようだった。
ちょうど自分の散髪が終わり、ちらっと女の子の髪を見たが……
甲子園球児?
率直な印象がそれだった。
そう、まるでスポーツ少年のような短さになっていたのだ。
ちなみに女の子の顔はまじまじ見なかったが、声はごく普通の女の子だった。
お母さんはカンカンに怒るんじゃないだろうか……。
さて、このお父さんはなぜそんなに短くしたかったのだろう。
もしかして、次の散髪までの期間を伸ばそうとしてたんじゃ……。
まあお父さんの真意はわからないし、このご家庭では女の子でも、スポーツ少年のような短さがデフォルトなのかもしれないが......何より確かなのは、一人10~~15分で回転させたい1000円カット店としては、このお父さんは不利益な客だったということだ。
「最初からこれ(見本)を見せてくださいよ〜〜」
まさに美容師さんの本音だろう。
ちなみに自分はいつも、こうリクエストする。
「韓流アイドルみたいな感じで」と。
うん、なるはずもない。泣
だがいいのだ、こちとら見た目で商売をしてるわけじゃない。清潔感があればいいというか、「不快感をなくす」ことができればそれでいい。
切り終わるといつも「めっちゃいい感じですね! ありがとうございます!」と告げ、さっさと立ち去る。
そんな自分から1000円カットにひとこと言いたい。
「1000円で切ってくれて、ありがとうございます」
と。
考えてみてほしい、これだけ世間が値上げラッシュの中、変わらず1000円で切ってくれるのだ。
ありがたい限りじゃあないだろうか。
1000円カットをネタにする人、やり直しさせる人、それぞれに考えがあってのことだ、別にそれらを批判したいわけじゃない。
ただ、1000円カット店にはその安さを実現するため、知られざる苦労・努力があるということを知って、ますます感謝の念が自分には沸いた。
今後もぜひ、利用させていただきたい。
そして、「韓流アイドルみたいに」と言うと時折、「わかりました」の声に若干笑いが混じってるのも、大目に見ようと思う。