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それで付き合ってないとか信じない  作者: F
二学期/やっぱりこの二人近くない?
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番外12.

二度目(三度目?)の登場となります。

 今まで。

 占い師が顔を隠している人も居るのは何となく神秘的な雰囲気を出すための小道具要素が強いんじゃないかな? と思っていた。

 けど、今はもう一つ上げられる。

(……どうしたものでしょう)

 どうしても気まずい相手がひょっこりと現れた際にも、それを悟られないためのものだと。

 そんなことを思いながら、ヴェールの下でこっそりと溜息を吐いた。




 学園祭でのクラスの展示が占いに決まったのは何となく好きな女子が多かったところに、お祭り騒ぎに乗じてに大掛かりに教室を変えたいDIY系の好きな男子が乗っかかった結果、だった。

 まあ、それから何となくインテリアに比重を置いてなんとなくで所持していたタロットカードをそれなりに勉強してみたり、それっぽい衣装を皆で自作した準備期間は楽しかった。

 まあそれは良いとして。

 滑り出しの緊張も程良く解れ始めた頃、凝り性の男子がそれっぽく作り上げたブースの中に現れたのは一学期終わりから二学期にかけて意識して避けていた人だった。




 居心地が悪そうにしている彼は、明らかに「一緒に回ってる相手に引っ張り込まれました」という顔をしている……し、実際のところそうなんだろうと思われた。

 で。

 その引っ張り込んだ方の女子が口を開いた。

「えっと……」

「あ、済みません……どのようなことを占いますか?」

「その……わたしたちの、相性、とか」

 ですよね。

 他ならぬ二ヶ月ほど前の自分がそうだったから……密かに調べた誕生日あたりから占いの表に当てはめてみたりなんかしてしまって。

 だから、気になる気持ちは理解できるし、実際今までも男女で訪れた二人はたいていそう言うことを占って行ったので気持ちはわかるものの。

「必要ないのでは?」

「え?」

「ああ、ごめんなさい……独り言です」

 思わず口から転がり出た極小の呟きは幸い拾われなかった模様だった。

 でも、仕方ないのではないだろうか? 付き合ってる付き合ってないで若干悶着は起こしているものの隣のクラスの評判カップルは何処を如何見ても完璧に相思相愛なんだから。

 今更そんなことを気にせず堂々としていてくれれば、いっそのことこちらも無謀な賭けをしたものだと清々した気持ちでいられるので。

「では……」

 カードを並べその中から選ぶように促す。

「えっと……どれがいいのかな?」

「……昔から異常に籤運いいんだからどれでも大丈夫だろ」

「えへ……そだね」

 タロット占いに籤運なんて関係あるんだろうか? と思ってからの、付き合いが長いです発言がちょっと胸に刺さる。

 もしかして、もしかしたら……とあの時は思っていたのだ。

 実際に話してみればあんなにも彼女のことしか見えていないのか、と思い知らされたし、その後それと無く見た機会には何故あの前に気付かなかったのかと自分に苦笑いするくらい彼女には違う顔をしているのに。

「じゃあ、これで」

「はい」

 ああ、いけない……個人的感情は置いて今はお仕事、と思ったものの。

「このカードって」

「恋人、ですね」

「えへ……だって?」

「……」

 照れ笑いして斜め後ろの彼を振り向かないで欲しいし、彼も恥ずかしそうな顔をしつつ目を逸らさないで欲しい、っていうか逆位置だったらどうするの? ……と思ったけれど、きっちり正位置の方だし……それに、もう、そんなの関係ないんじゃないのかな?

「たぶん、いいカード、だよね?」

「多分な」

 正直、何だかもう面倒臭いというか改めて占いなんて必要ないでしょ? って気持ちになって来ていた。

 つまるところ、この二人と一緒の閉鎖空間に居ることが、ちょっとしんどい。

「御覧の通り、お二人の相性については保証付きですので安心してくださいね」

 ついでにあの神社のご加護もあるだろうし、カードも問題ないので半ばヤケになって断言した。

「ありがとうございます」

「いえ……」

 内心色々と思っていることはあるものの、それらを除けて感想を言うならいい笑顔だな、という顔でお礼を言われて返す言葉に詰まる。

「お大事に……してくださいね?」

 確かに目の前に居るのは重篤患者の模様だけれど、苦し紛れに私は何を言っているんだ? と混乱を自覚する。

 頭にクエスチョンマークを浮かべながらも上機嫌の様子で緞帳を潜って外に出た彼女に続いて背の高い彼が首を下げるのと会釈を同じ動作でした瞬間。

「……」

「!?」

 ふと思い付いて、目の前に下げていたヴェールを上げて彼にだけ顔を見せてみれば、驚きの表情になって……ただ二人して歩き出していた足は止まらずそのまま外へと連れ出されていった。

 ただ、その驚きぶりに。

 その呆気に取られた顔に。

「ふふっ」

 多少、溜飲の下がる思いがするのだった。


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