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それで付き合ってないとか信じない  作者: F
一学期/幼馴染同士の距離がわからない?
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02.新生活午前

「ね、はやちゃん」

「うん」

「はやちゃんが帰ってきたらね、もも、はやちゃんのお嫁さんになりたい」

「ももちゃん……」

「だめ?」

「もちろんうれしいけど、そんなに大人にならないと帰れないわけじゃないから」

「そっか……じゃあ」




「……」

 目覚めて見上げるのは昔見慣れていた天井と蛍光灯。

 見ていたのはここ六年の間何度か見た、そして昨日の今日で見ない筈のない記憶の夢。

 だからこの家に帰ってきた、なんて我ながら馬鹿かもしれない……と思うけれどそうしない選択なんてなかった。

 よく笑って泣いて一緒に遊んだ女の子は一番大事と言える存在だったし、それは今も変わっていない。

「準備しないと」

 外の明るさは少し早いが頃合いだった、軽くランニングをして登校準備をするには。

 軽く肩を回して布団を畳みながら、むしろ高校生活初日には余裕があった方が良いとも思った。

 西側の窓は、事故防止のため締め切りとした。




 その為か、初登校の通学路は比較的空いていた。

 一応声を掛けた隣の開店準備中の青果店からは「何故だか早く準備して出て行った」と言われてしまい、どうしたものかとも思ったけれど、とりあえず昨日の件で怪我はしている様子はないな……とだけ安堵する。

 まあ、高校生にもなって一緒に登校というのも無いか、と思いつつ。

 速やかに校門をくぐればこちらもまだ人はまばらで見易いクラス分けの紙を下からチェックする、二組の最後に「吉野隼人(よしのはやと)」を見つけ、一気に上に視線を上げれば「綾瀬桃香(あやせももか)」の名前があった。




 ただ、同じクラスとはいえそこは慌ただしい入学式の日。

 新担任が教室に現れる直前まで桃香が別クラスの友人たちと話でもしていたか見当たらなかったこともあって、隼人の視界に彼女は後ろ姿しか映ることはなかった。

 僅かな自由時間の中で見て取る分には家から徒歩圏内の高校ゆえに中学時代からの仲のいい相手は新クラスにも多いようで五人くらいの輪の中にいて、中心という訳ではないけれど楽しげに盛り上がっているようだった。




 そしてHRが終わり初日は放課後に。




 後で冷静になればおかしな感覚だとわかるのだが、同じ教室に半日居て桃香と話さなかったことはない隼人は五十音で並べられたクラスの席を対角線で突っ切って最前列窓際の彼女に話し掛けていた。

「あのさ」

「はい?」

 突然の声に不思議そうに見上げた表情、制服姿と髪を抑えるピンは違ったけれど、隼人の姿を認識してからは昨日と同じ変化。




「ご、ごめんねー!!」




 教室中に響く悲鳴のような謝罪と、脱兎の様に駆け出していく桃香。

 どこをどのように見ても悪いのは呆気に取られている隼人。




 突き刺さる視線に言われなくとも。

 選択ミスは、明らかだった。


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