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それで付き合ってないとか信じない  作者: F
三学期/結局二人は変わらない?
205/225

185.ファーストフライト

「はやくんって飛行機はじめて、だよね?」

 学校に集合後、バスで送り届けられた空港の中でやや隊列を崩して待機時間に入った途端に話しかけられる。

「まあ、実は」

 そう答えると搭乗前の手持ち無沙汰な時間には格好の話題だったのか同じ班、及び近くの班の面子で話が弾み始める。

「え? お母さんの御実家が結構遠いんじゃないの?」

「沖縄や北海道みたいなザ観光地ではないのでそんな本数飛んでないから時間帯も上手く合わないし使うと逆に不便なんだ」

「ほー、なるほど」

 琴美の疑問に応えれば誠人が頷く。

「ちなみに、中学校の修学旅行って……」

「電車で京都と奈良、だったよ」

 絵里奈に聞かれて答えればなんとまあコテコテな所行ったんだね、と笑われる。

「行き先がこっちだったら、抜け出して一目桃香に、とかあったんじゃないの?」

「あら、まるで漫画みたい」

「ですね」

 キャッキャと言い出す美春に花梨と由佳子が頷くものの。

「仮にそうだとしても、短時間だと逆にしんどいと思ってやらなかったんじゃないかな」

「経験者が語ると含蓄があるな」

「確かに」

「ははは……」

 感心したように頷いた勝利と友也に苦笑いを返しながら、内心でもう一つ付け加える。

 脱走事件については初犯ではないので、そういう意味でも思い止まったのではないだろうか、と。




「それはそうと、吉野君以外に飛行機初めての人~?」

 列になって歩きながらも、美春の音頭で挙手を募れば当の美春と蓮のみで。

「え、そうなん?」

「ちょ、マジで」

 二人が顔を見合わせた所で、他の面々が説明を始める。

「私はそもそもおばあちゃんがヨーロッパ出身だし」

「家族旅行でハワイ行ったことある」

 と絵里奈と琴美。

「私も家族で何度か……ニューカレドニアとか、モーリシャスに」

「委員長じゃなくてお嬢って呼ぶか」

「止めてよ」

 ついで花梨。

「母がその、ドラマに嵌って一緒に韓国まで連れていかれて撮影地巡りしました」

 恥ずかしながら、と由佳子。

「わたしもちょっと、お母さんのお友達と観光でイタリアに」

 ジェラート美味しかった、と桃香。

「え? ちょ、女子勢パネェ……」

 あんぐりと口を開ける蓮に、ぼそりと勝利が告げる。

「悪いが、俺もMLB見に何回かロスまで行った」

「裏切者―!!」

「あら、結城君もわりとお坊ちゃま?」

「……さっきのは謝るから止めてくれ」

 そんな遣り取りの後。

「あ、僕は家族で北海道」

「同じく福岡」

「あー……何かほっとする」

「いえいえ」

「どういたしまして?」

 友也と誠人を美春が軽く拝む。

「そういえば、あたしらは中学校の修学旅行は神戸と大阪だったけど、他の皆は?」

 隼人は先程答え、由佳子以外の女子と勝利は美春と同じ中学のために順番に話が回る。

「同じく関西だったね」

「だな」

 こちらも中学は同じ誠人と蓮が答え。

「僕の所は山梨長野」

「あ、私の所もでした」

 友也が言うと由佳子も続く。

「まあ、流石に中学校だとバスか新幹線で二泊三日だよね」

「そうだと思うよ」

 頷き合いながらも、今回は飛行機で更に三泊四日とグレードアップだ、と密かに気分が上がって行く。

 そんなこんなのうちに、搭乗ゲートが見えてきた。




「うわー、なんか……緊張してきた」

「ちょ、止めてよ」

 タラップから機内へ、といったところで先程の高揚もちょっと落ち着いたのかビギナー二人がそんなことを言いだす。

「そういえば……どうしてでしょうね?」

「「ん?」」

「こんな金属の塊が空飛ぶの」

 首だけ振りむいて花梨がそんなことを小さく笑いながらのたまった。

「あー、初めての人とかよく言うよね」

「おおぃ……止めてくれよ」

「花梨の鬼! 絵里奈の悪魔!」

 明らかに面白がっている花梨と絵里奈に苦笑いしていると、桃香に袖の辺りを突かれる。

「はやくんは、平気?」

「まあ、何というか……グライダーとかに比べればまだ飛ぶよな、って思えるし」

 小窓からこれから搭乗する大型の機体とそれに備わっているエンジンに頷く、そしてその奥を甲高い音を立てながら一機のジャンボジェットが飛び立っていく。

「何気にそっちの方がレア体験じゃねぇか」

「そういう体験、隼人は豊富だよね」

「まあ、それしかない田舎だったので」

「……いいなぁ」

 一部を除いて口も軽く機内に入ったところで友也が少し声を張る。

「はい皆、席の割り振りは大丈夫だよね?」

「「「はーい」」」

「「「おーう」」」

 それぞれ手近な相手とも確認しながら事前に決められている座席表に従って席に着く。

 流石にここでは班割関係なく男女順で離れた席になってしまった桃香の方に、席に座り直すふりをしながら腰を上げて軽く振り向き気味に目を遣れば丁度機内を横断して目が合って軽く手を振られる。

 何となく一学期のことを思い出すな、と感じたところで「ほーん?」といった感じの目線を三列シートを分け合う友也と勝利から向けられる。

「気分はとうに南国か?」

「ま、いいんじゃないの? 順調そうで」

 そんな二人にわざとらしく咳払いをしてから、手荷物に入れていた文庫本を取り出して膝の上に置きつつ、真面目にベルトの締め方のパンフレットを確かめるのだった。




 そして。

「おお……飛んだ?」

「そりゃあ、飛行機だし」

 前の席から聞こえてくる蓮の感動の声と冷静な誠人の突っ込みに三人して軽く噴き出した後。

「じゃ、一眠りするか」

「朝早かったしそうしようかな……夜も長いと思うし」

 慣れた感じにイヤホンを耳に差し込みながら体勢を整える勝利とそれに倣う友也をよそに早起きは習慣になっていて気持ち早いくらいだった隼人は眠気が来たら、くらいの心持ちで本を開く。

 その前に桃香はどうしているかがふと気になったところで。

「桃香、ありがと」

「ううん、お安い御用、だよ」

 学生らしく控えめながらも騒めく機内でもそんな会話を耳に拾う。

 多分、かなり不安そうだった隣の美春の手を握っていたのかな? と微笑ましい気分になったところで……あまりあからさまに視線を送ったりするのは控えておこうと決める。

 少なくとも今は抑えていけるから。




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