岬の声
私、木野希はある港町に住む高校2年生だ
そして、上田美咲へのいじめへの「傍観者」である
いじめとはあまり馴染みのない人も多いかもしれない
学校の授業で、「いじめを止めれるようになりたい」とか
「いじめは絶対してはいけないこと」ということを授業で書く人も
多いのでは無いのだろうか。
実際起こってみれば、そんなことなど行動に起こせる人はいない
ただし、それは事実でもあり、異なったことでもある
これはそんな出来事を描いた物語
「ねえ、美咲こんだけ貸してくんね?」と人差し指を上げて加藤真紀は言う
「今からカラオケと買い物行くんだわ」と取り巻きである、伊藤沙羅が脅迫のように呟く
美咲は「今、お金ないし、、今日は早く帰らないといけないから、、、」といい
鞄を持って席を立って教室を出ようとする。
しかし、真紀は岬の腕を掴み勢いよく引き寄せた
「逃げんなよ〜 ま、逃げれないんだけどねwww」笑い、美咲を平手打ちする
イタッという声が少し聞こえたが、構わず真紀と取り巻きが殴る
「早く金出せよ〜 キモいんだからよ」と金森咲は罵倒を浴びせる
「もう奪っちまおうぜ」と沙羅はいい鞄を美咲から奪い、財布の中漁る
「あれぇ〜おかしいな〜10万円も入ってんじゃん」と札を抜きながら嬉しそいうに言う
「あっ、それは、、お母さんの入院費!」と美咲が言うと
「そんなん関係ねえし、ま、ありがとなw」と真紀は言い教室を後にした。
「うわっ」や「ひっど」など声は聞こえるが誰も助ける気配がない
そうこれこそが「加害者が支配したクラス」なんだ
その日の放課後、堤防横の道路を通り家に帰っている途中だった。
「今日もいじめられてたな。どうしたら救えるんだろ」
と心で呟いたものの、自分に行動を起こすことができない。
いわゆる傍観者の典型例だと思っている。
そう思って歩いていると、前に、くたびれた制服を着た美咲がいた
「う、上田さん?」と声をかけてみた
美咲はそれを聞いて後ろに振り返った「えっと…木野さん…だっけ?」と
とても落ち込んだ様子で返答してくれる。
「う、うん…今日大丈夫だった?」と少しふれてみる
「うん…大丈夫」と美咲は答えた
これは、、多分大丈夫じゃない
そうすると突然美咲は話し出す。「木野さん。どうすれば世界は変わると思う?」
突然のスケールの大きい質問に驚いたが、少し考えて答えてみた
「周りの印象が変わった時、または相手が自分を認めてくれた時…かな」と美咲に答える
そして、美咲は少し考えた後に訪ねる「木野さんは私を認めてくれるの?」
その時「今ならこの状況を変えれるかも」と直感的に思った。
「認める、認めることが大事なのかもしれない」と美咲に答えてみる。
「なんで?」とさっきの暗い声よりも、少し明るい声で聞いてくる
「みんな加藤さんたちが怖いんだよ。怖いから自分もこう言う目に合いたくない
と思っているから何もできないんだと思う。 自分がそうだから」と真剣に考え抜いた答えを言ってみる。
「じゃあ、助けてくれるの?」と美咲は尋ねる
「その場では無理かもしれない。でも、必ず話し相手になりに来てあげる。
愚痴でも、弱音でもなんでも受け止めてあげる」と自分では考えつかないほどすぐにこの答えが出てきた。
「ほんとうに?」と聞く美咲を見上げると、涙が溢れていた。でも笑っていた
そして、こくりと頷き、2人で抱き合った。
その時、美咲から「安心や嬉しさ」が優しく伝わってきた。
家に帰り、今日のことを思い出してみた
「美咲を直接救ってあげることはできないけど、その受け皿にはなれたかな」と
考えついた。
夕食の時は父、母、小学3年生の弟、自分の4人でご飯を食べる
この日の夕食中に弟が話し始めた。
「あのね、今日面白い話を聞いたんだよ!」と元気いっぱいで言う
「何の話?」と尋ねると弟は語り始めた
「この街の端にある岬で思いを込めた人についてのお願いを水平線に叫ぶと
その願いは叶う」っていうお話
父や母と私は「そんな話あるんだ〜」と本気にはしなかった。
「他にもね、学校にはいるって話とか、深夜に外を歩くとどこからともなく音が聞こえてきて、電気が消えるとか」と話が続いていく。
いつも夕食の時にはこんな話ばかりが出てくる。
こうしていつも通りの夕食は終わっていった。
そして、美咲と話してから1週間がたった
その後も、いじめは続いており、傍観者としてみることしかできなかった。
そして、3日が経った頃、美咲が登校して来なくなった。
先生に事情を聞くと、「交通事故にあった」と言っていた。
病院を聞き、向かうと、ベッドに横たわる岬の姿があった。
「み、美咲…… 美咲!!」と呼びかけるも、目を開けない
「お友達の方ですか?」と医者は聞く
先生によると、事故にあったことにより、脳にダメージが入り、
今は目を覚まさないという。
この時愕然とし、私は後悔を繰り返した
「あの時ああすればよかった」「こうすればよかった」と色々な考えが
頭の中をぐるぐる回り続け、倒れてしまった。
その後、ベンチで目を覚まし、
看護婦さんに「無理はいけませんよ」と釘を刺されてしまった。
自分は後悔が積もり積もっている。
そんな中、あの言葉が思い出された
「この街の端にある岬で思いを込めた人についてのお願いを水平線に向かって叫ぶとその願いは叶う」て言うお話
「この話が本当なら…本当なら」と思い
病院を飛び出し走った
岬に向かって走った
この話が嘘だとしても、少しでも、少しでも救えることができるようにと思い
岬に着いて思った「もう、美咲を救えないかもしれない、でも」
「美咲の今を変える!そして、いじめの傍観者ではなく、制止者になる!!」と
水平線に向かって叫んだ
そうすると、何か心がスッキリした気がした。
翌日学校で、
加藤真紀が「なんであいつ来ねえんだよ」とキレている
ここで怖気付いたら負けだ!と思い
「ねぇちょっといい?」とキレ気味で、加藤に詰め寄る
これが自分の、希の第一歩だ
「あぁ?なんだよ、うるせぇな」
この時、自分はボイスレコーダーを服に仕組んであったため、以降の会話は録音されている。
「いじめて何が楽しいの?」とキレながら尋ねる
「あいつが弱いからw いいカネづるだからだよwwwwww」と加藤は言う
その言葉を聞き、怒りのボルテージが最高潮に達した
そして「やめろ、」最初はボソッとだったけど、
「こんなくだらねぇことやめろ!今までどんだけあの子が苦しんできたのかわかるのかよ!」と人生で過去一キレて加藤に詰め寄る
いつもは大人しい自分がこのような発言をして、周りも、加藤たちも驚いた様子だった
しかし、加藤たちは「はぁ? 知らねえし。 だったらお前が金寄越せよ!」と
殴ってきた。殴られたところが内出血していた。しかし、予想通りだった
ボイスレコーダーを取り出して見せる。
「お前ら、これで終わりじゃないかな?」と嘲笑してみる。
そうすると、加藤たちはチッと舌打ちをして、教室を後にして行った。
まだまだ言い足りないことあったけどいいか
この日の放課後、岬のいる病室へ向かった
相変わらず横たわっている様子だったけれど、
医者によると、「順調に回復に向かっている。障害も残らなそうだ」と言っていた
この件をきっかけに、あることを思った。
それは
「あの噂、岬で思いを込めた人についてのお願いを叫ぶ」って言うのは
決意表明であって、おまじない的な効果はないけど、
そのことを動かせることは確かだってこと
私は誰もいない病室で呟く
「私は美咲に思いを伝えたよ。また、聞かせてね
美咲の声を」