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春田さんっ!今日のお弁当はなんですか?
「嘘でしょ……」
東京のオフィスの一室、約一年という長い新人研修を終えた相原綾香は掲示板を見てそう呟いた。
綾香の後ろでもガヤガヤと人だかって騒がしい。綾香と一緒でこの掲示板を見たいとやってくるのだ。
「おはー綾香。どしたのそんな顔して」
人混みの中をかき分けてやってきたのは同期のユカだ。ラフな格好をした彼女の手には一枚の紙がある。何かこの掲示板に貼りにきたのだろう。
「………………だった」
ボソボソと喋った綾香にユカはん? と怪訝な顔をした。
「え? 今なんて……ってうわっ! あんたほんとにやばい顔してるよ。絶望に暮れてんじゃん」
「だ、だって、私……来月から大阪勤務だって……」
ユカは何度か目をパチクリとさせて、事態を飲み込んだように目を丸くした。
「え!? あの鬼の大阪!? あんたここからいなくなんの!?」
「ふぇぇーー、どうしよユカーーーー!!」
どうしようユカに泣きついても、もう決まったもんは変えようはない。ユカは「ドンマイ! 大阪から帰ってくる時はお土産よろしくぅっ!」と言って去っていった。
このお気楽マンめ。