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妖怪喫茶・鈴猫堂へようこそ!  作者: 花宮智子
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ある青年の記憶

――――――何もない、と思っていた。


魔術師の間でも由緒ある家柄に生まれ、生まれたときから、生活全般の不自由はなかった。


ただ一つ、俺に『魔術の才能が無い』ことを除いては。


生まれたときから、周囲の目が怖かった。


憐憫や嘲笑、失望した両親の顔。


そんなものに苛まれながら、それでも頑張ってきた。


頑張ってきた、つもりだったんだ。



誰にも必要とされない、と思っていた。


あの雨の日、気紛れに、ほんの気紛れに拾ったあの猫と


『約束』を交わすまでは――――――

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