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朝の詩、光の記憶
――――――誰かの声が聞こえた気がして、『私』はそっと、目を開ける。
目の前に飛び込んできたのは、心配そうな父親の顔。
ああ、そうだ。私はこの人と契約して、彼の使い魔となり、また、娘になったんだわ。
紅茶やコーヒーを入れる腕はピカイチの癖に、どうしてだか魔術だけは苦手の、落ちこぼれだけど優しい優しい魔術師の『パパ』 。
目の前でいまだ心配そうにしているパパにすり寄って甘えると、漸く彼は安心したようにため息を吐いた。
そうよね、私、もう独りぼっちじゃないんだわ。
もう、冷たい雨に震えることもない。 もう、寂しい夜に鳴くこともない。
そう思ったら、なんだかひどく安心して、私の小さなお腹はぐうぅーと鳴った。
その音に、大好きなパパは困ったような顔で笑って、肩の上に小さな私を乗せると、美味しい朝食を作りに、一階のキッチンへ降りていった。
さあ、大好きなパパと一緒に、今日は何を作ろうかしら?