【8】領地にする場所
目的の地へと向かうことために、空阿は空を飛んで移動していた。
(……今更なんだけどさ、2160km先にって言われたから向かってるけど、場所って分かるの?)
「あー……どうなんだろうな。呼び出して聞いてみるか」
空阿は地上に降りて、主導権を自分に戻した。
「いでよ、クルスハ!!」
そう唱えると、目の前の地面に魔法陣が出現した。魔力を込めると魔法陣が光を放ち、クルスハが現れた。
「クルスハ。目的の場所って着いたら分かるものなの?」
「はい。その場所の風景を見ればわかります」
目で確認すれば分かるのか……。うーん、MPを消費したままなのは不安だけど、仕方ないか……。
「クルスハって空飛べたよね?」
「はい。大丈夫でございます」
「それじゃあ、空を飛んで俺に着いてきてくれる?で、目的の場所に着いたら教えてほしいんだ」
「かしこまりました」
そう言うと、クルスハが乗っている馬とクルスハの背中から羽が現れた。
「あ、そういえば、俺の中に悪魔がいるって言ったの覚えている?」
「はい。覚えております」
「じゃあ、俺が飛んでる間はそいつに変わるからよろしくね」
「かしこまりました」
その言葉を聞いて空阿は主導権をカブルに渡した。
「よろしくな。クルスハ」
「はい。よろしくお願いいたします」
ため口と敬語……。カブルの方がクルスハよりも階級が上なのか……?
カブルとクルスハの会話から疑問を覚えた空阿であったが、
……いや、でも、クルスハの性格からして、誰に対しても敬語で話しそうだよな……。2人に聞いてもはぐらかすからなぁ……。
以前、カブルの正体を調べるようと何度も探りを入れてみたが、毎回のらりくらりと躱されてしまって、まったく情報を得ることができなかった。また、クルスハにカブルの正体について尋ねたときも、お答えできませんと言われてしまい、クルスハからも情報を得ることができずにいた。
カブルの奴はどうもきな臭いからなぁ……。どうにか正体を掴めないかと思っているけど、中々なぁ……。
カブルの正体を掴むことができず、空阿はもやもやしたしたものを感じていた。そのもやもやしたものが、不安なのか、恐怖なのかは空阿にも分からない。
空を飛ぶこと数時間。
「見えました。あそこです」
目的の場所の近くにある小高い丘の上に降りた。
「あそこは……」
目の前には街が見えた
「何であの街がいいんだ?」
「分かりません」
「そうなんだ。……分かりません!?」
「はい」
えー……。
「ですが、ここが1番良いと占いの結果で出ました」
「そうかぁ……」
この街が何で1番良いんだろう……。街ってことは……占領するってこと!?てっきり、何もない場所を領土にするんだと思ってた……。
「……やるしかないか」
「?どうされました?」
「いや、クルスハ、お前の言うことを信じるよ」
この街を俺の領土にするんだ……。
「まずは、どうやってあの街に入ろうか……」
(入る必要なんてないだろ。……攻め落とすんだよ)
「でも、街の情報とか……」
(そんなのは、いらないだろ)
そういうものなのか?普通、そういった情報をもとにどうやって攻め落とすのか決めるものだと思うんだけど……。
「よし、まずは、自分の戦力から把握しよう」
(そうだな。それがいい)
〇---------------------------------------------------〇
名前:苫芝 空阿
Lv:50
[ステータス]
HP:4500 MP:2500 力:132 身の守り:129
素早さ:93 魔法攻撃:106 魔法防御:101 運:10
[スキル]
・悪魔召喚
・陞滂スゥ闖エ?ソ陷ソ?ャ陜
〇---------------------------------------------------〇
「……城攻めにいい悪魔っている?」
(えー、また俺の助けがいるの~?)
「いや、お前には聞いてない。クルスハ知ってる?」
(おい)
「主よ申し訳ないのですが、あまり、そういったものは詳しくなくて……」
「そうなのか……」
どうするかなぁ……。読める範囲で、調べるか……。
どの悪魔が良いか本とにらめっこをして数十分が経過した。読める範囲が少ないため、どの悪魔が良いのか頭を悩ましていると、
(……38ページ……)
「ん?」
(38ページだ!!)
「お、おう」
カブルに言われた通り38ページを開いた。
「何々、蛇……、黒い……、火……、戦争……、助言……」
なるほど、見た感じ戦争に関係した助言をくれるってことかな?
「……よし、こいつを召喚しよう」
消費MPは……3000か。
「クルスハ一旦戻ってくれるか?この悪魔を召喚したら、ひと段落したらまた呼ぶ」
「了解しました」
そう言うと、クルスハは消えた。
召喚した状態を維持するには、召喚時に消費したMPの1/5を消費し続けないといけないから、こうやって、戻したり出したりするの面倒なんだよなぁ。
そんなことを思いつつも、魔法陣に魔力を込めていく空阿。
初めて召喚する時に魔法陣に魔力を込めるから、時間がかかるのもネックだよなぁ。1度召喚してしまえば、簡単に呼び出すことができるけど……。
心の中で愚痴を言いつつも魔力を込めていると、魔力が貯まり、魔法陣が光ったと同時に、悪魔が現れた。
「お呼びでしょうか」
呼び出された悪魔は、丁寧な物腰ではあるが、その姿は大きな黒い狼で、背中には翼を持ち、尻尾は蛇というものであった。
「じゃあ、さっそくだけど、お前の名前は……。アシスだ」
「名前を付けていただき、ありがとうございます。本日より、アシスと名乗らせていただきます」
「俺は、空阿だ。よろしくアシス」
「よろしくお願いいたします。空阿様」
「あぁ、それじゃあ、能力について教えてくれるか」
「はい」
そう言うと、黒い霧のようなものがアシスの体を覆って、その姿が消えた。
……何の能力なんだ?
そう思ったのも束の間、霧が晴れるとそこには若い男性が立っていた。
「え……」
「これが私の能力の1つである人化でございます」
「これは……」
この能力は良いぞ……。これがあれば、人間の街で情報収集ができる……!!
「他には、他にはないのか!?」
「後は、戦についての助言が少々できます」
「そうか!!」
よし!!これで、あの街を攻め落とす作戦が立てられる!!
「さっそくで悪いけど、あの街を落とす作戦を立てたいんだ。お前の能力で助けてくれ」
「なるほど……。ちなみに、あの街についてどの位分かっていますか?」
「……全く分かりません」
「まったく?人口も戦力もですか?」
「……はい。申し訳ないです……」
「そうですか……」
やっぱりそういった情報が必要じゃねぇか!!カブルのやつ、何がいらないだよ!!
「では、空阿様の戦力をお教えいただいてもよろしいでしょうか」
アシスに自分がどの程度のMPを保持していて、そのMPからどれだけの悪魔が召喚できるかを教えた。
「……なるほど」
「厳しそうか……?」
「いえ、ただ……。相手の最高戦力が分かりませんので、どうしたものかと」
そこら辺の情報って必要だよなぁ……。
空阿達が頭を悩ませていると、
(……しゃあねぇなぁ。ちょっとだけ教えてやるよ)
「え?教えてやるって……」
(あそこにお前の脅威になるような存在はいないから安心しろ)
「それは、本当か?」
(あぁ、お前が召喚できる悪魔で十分だよ)
「分かった。アシスにも伝えるよ」
少し離れて戦略を練っていたアシスの元に近づいた。
「アシス」
「どうされました?」
「相手の戦力的には俺の悪魔で十分だってよ」
「ん?それをどこで……。あぁ、なるほど、了解しました」
「どうだ?いけそうか?」
「えぇ」
そう言うとアシスはしゃがんで地面に何か描き始めた。
「では、作戦についてお教えします」