【21】紹介と面接
「お前……誘拐してきたのか!?」
ロレーヴァの声が領主館内に響く。
「何でそうなるのよ……」
ディアヘルに到着した空阿達は領主館の中に入ると、偶然ロレーヴァがいたため、挨拶を交わして立ち去ろうとしたところで、呼び止められたのであった。
「では、どうしたのだ!!後ろの少女達は!!」
空阿の後ろからイチとニが顔をのぞかせており、大きな声を出しているロレーヴァを少し怖がっているようであった。
「あぁ、説明するよ。こっちの子がイチ、こっちの子がニだ」
少しの間、沈黙が流れた。
「……え、それだけか?」
「あー、まぁ、詳しく説明すると」
空阿はルシエーラでの出来事をロレーヴァに説明した。説明を黙って聞いていたロレーヴァは、少し難しい顔をした。
「魔族とのハーフか……」
「……何か問題でもあるのか?」
「いや、そういう訳ではないのだが……」
魔族と戦争しているような関係だし、難しい問題ではあるか……
空阿が考えているように、魔族と戦争していることもあり、人間の魔族に対する偏見はひどいものであった。また、魔族に姿が似ているという理由から、獣人などに対しても冷たい態度をとる者も少なくはない。
「……俺は、この世界で生まれたわけでもないし、特に魔族に対してマイナスのイメージは無いんだ。それに、俺は人間であろうと魔族であろうと、助けを必要としているなら助けてやりたいんだ」
その言葉を聞いたロレーヴァは少し慌てて、
「何か誤解をさせてしまったようだが、私も別に魔族と関わりのある者を冷遇する考えはない。……ただ、全ての者がそうではないからな、その子たちが過ごすには厳しいものがあると考えていたんだ」
空阿の勘違いを訂正した。
「そうか、それならいいんだ」
空阿はイチとニをロレーヴァの前に行くように手でうながした。
「さぁ、2人とも挨拶をして」
イチとニはもじもじとしながらも、
「……イチです」
「……ニです」
ロレーヴァに向かって挨拶をすると、ロレーヴァはニッコリと笑った。
「あぁ、私はロレーヴァ・ペルンシスだ。2人ともよろしくな」
ロレーヴァが2人の頭を撫でると、イチとニはビクッと体をこわばらせたが、すぐに目を細めて気持ちよさそうにしていた。
「ところで、何で2人はイチとニという名前なのだ?」
「詳しい理由は分からないけど……。まぁ、生まれのこともあるし、適当に付けられたんだと思う」
ロレーヴァはそれを聞くと2人の少女が受けたであろう扱いを想像して悲しそうな顔をした。
「そうか……」
そう呟くと、ロレーヴァは2人を抱きしめて、
「2人は今の名前気に入っているかい?」
そう尋ねると、イチとニは質問の意味が理解できないようで、頭をかしげた。
「もしよかったら、2人に新しい名前で呼びたいんだけど、良いかな?」
その言葉を聞いたイチとニは顔をほころばせて、大きく何度もうなずいた。
「フフフ、そんなにうれしいかい?それなら良かった」
そう言うと、ロレーヴァはイチとニを空阿の方を向かせると、
「さぁ、新しい名前を考えてあげてくれ」
空阿を見ながらそう言った。
「……え、俺?」
「何を言ってるんだ。お前が保護をしたのだから当たり前だろう」
「いや、でも……」
チラッとイチとニの方を見ると、期待に満ちた瞳をしており、断るに断れない状態であった。
「そうだなぁ……」
名前……名前かぁ……。
急な無茶ぶりに空阿は頭を悩ませる。
うーん……。どんな名前がいいかなぁ……。
イチとニは相変わらず期待に満ちた瞳で空阿を見つめ、新しい名前を今か今かと待っていた。
赤と青か……。
2人の特徴的な髪色と瞳を見ながら、空阿は名前を考える。
「それじゃあ……。ルビィとフィアはどう?」
「何故、ルビィとフィアなんだ?」
「いや、この赤と青の瞳がキラキラと光って綺麗だなって思ってね。だから、ルビーとサファイアから考えてみたんだけど……」
「なるほどな、悪くないんじゃないか」
空阿はしゃがんで2人の少女と目線を合わせた。
「ルビィとフィアって名前考えたんだけど、気に入ってくれたかな?」
2人の少女はブンブンと何度もうなずいて全力で肯定していた。
「そっか、良かった。じゃあ、これからよろしくねルビィ、フィア」
そう言って、空阿はルビィとフィアの頭を撫でると、2人は気持ちよさそうに目を細める。空阿は2人との距離が縮まったように感じた。
「気に入ってもらえてよかったよ」
満足するまで頭を撫でた後は、ルビィとフィアを連れて他の領主館メンバーにも紹介して回った。最初は驚いていたが、少し変わった者達ばかりだったので、特に拒絶するような反応を示すこともなく2人を受け入れていた。
ルビィとフィアの紹介を終えると、2人をロレーヴァに任せて、空阿は会議室にいた。
「それで、今日は何人の面接があるの?」
「本日は5名ですが、明日は20名ほどです」
「20人か……」
空阿達は領主館で働く者達の面接を行うために会議室に集まっていたのであった。
「そろそろ、始めますか?」
「ちょっと待ってね」
そう言うと、空阿はタリオンを呼び出すと、隣の席に座らせた。
「タリオン。相手の返答が嘘か本当かメモしておいてくれ」
「かしこまりました」
「よし、それじゃあ、はじめようか」
ラウィズは、はいと返事をすると、部屋を出て応募者の1人を部屋の中へと案内した。
「お座りください」
「はい!!」
元気よく返事をした応募者は、栗色の髪を後ろで結んだ若い女性であった。
「それでは、面接を始めますが、まずは名前と年齢をお願いします」
「はい!!ミレイア・セリザント、19歳です!!」
元気な子だなぁ……。
「では、何故応募しようと思ったのでしょうか?嘘をついても分かりますので、正直に答えてください」
「応募した理由は、給料が高いので応募しました!!」
うーん。めっちゃ正直で簡潔。
「なるほど、得意なことはなんですか?」
「得意なことは……」
その質問を受けたミレイアは目をつぶり、うーんうーんと言いながら頭を悩ませていた。
「あー、そんなに悩まなくても、自信のあることでも大丈夫ですよ」
「自信のあること……」
ミレイアは少し考えた後、はっとしたように顔を上げると、勢いよく手を上げた。
「元気なところです!!」
「……」
まさかの答えに何も言えずにいた空阿であったが、
「なるほど……」
その場しのぎの返答をすると、その後にもいくつか質問をして、ミレイアとの面接を終えたのであった。
ミレイアが部屋から出ていった後、空阿はタリオンと話していた。
「嘘はあったか?」
「それが、全くありませんでした」
「まったく?少しの嘘もか?」
「はい、空阿様の質問に対して、一切嘘は混じっておりませんでした」
「珍しいな……」
タリオンは嘘を見抜くことができるが、その精度は目を見張るものがある。真実9割、嘘1割文章のであったとしても、どの部分が嘘なのかということが分かってしまう。だが、人の口から発せられたものに限られており、文字での審議は分からないという欠点もある。
そして、空阿はミレイアのような面接で全くの嘘を混ぜない人が来るのは予想していなかった。
「逆に面白いかもなぁ」
(面白いって何がだ?)
「いや、確かに能力的には使えるかどうか分からないけど、ああいうタイプの人間が組織内にいるのも面白いかもしれないなって思ってな」
(ふーん。正直が面白いねぇ)
「まぁ、嘘ばっかりのお前には分からないか」
(おい)
空阿はカブルを無視して、ラウィズに次の応募者を部屋の中に入れるように伝えると、応募者が部屋の中に入ってきて、面接を行うというのを繰り返すこと4回。全ての応募者との面接が終わった。
面接が終わり、応募者の資料に目を通しつつ、採用するかどうかを考えていた。
「そうだなぁ……全員採用してもいいんだけど……」
実際のところ、領主館での仕事の多さから考えると、応募者全員を採用しても足りないほどであった。
「何か問題でもありましたか?」
「いやなに、こいつらはどうするか決めかねててね……」
空阿がラウィズに2枚の資料を見せた。
「……この者達が何か問題でもありましたか?」
「嘘の塊なんだよねぇ、この2人」
偽名を使ってるみたいだからなぁ……。どこかのスパイだとは思うんだけど。
その2人の資料には、エリック・ウェール、シエリア・ネンバーという名前が記されていたが、その名前は本当の名前ではないことがタリオンの能力で判明していた。
「採用しないのはもちろんなんだけど……。のさばらしておくのも面白くないからなぁ」
こんな堂々と潜り込んでこようとするなんて勇気があるというか、何というか……。
「この2人が存在する人物かどうか調べておいて」
「分かりました」
ラウィズは会議室から出ていくと、空阿は2人の資料を眺めつつ、どう対応したものか考えた。
こっちから手を出すのは面白くないなぁ……。
「……種でもまいておくか」
空阿は立ち上がると、1体の悪魔を召喚した。
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