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20/21

【20】接触

 街への襲撃から1週間が経った。空阿は1週間の間、レベル上げや領地内の問題把握、従業員募集に対する応募者の整理といったことを行って過ごしていた。


 今日は、各ギルドが空阿の提案した組織に入るかどうかを決める日であった。そのため、領主館のメンバーは会議室に集まっていた。


「どれくらい集まるだろうねぇ~」


「1/3集まれば良い方かと……」


 実際の所、商人ギルドなど、ギルドの規模が大きくなれば大きくなるほど、今回の組織に入ることを渋っていた。


「まぁ、集まらなかったら、集まらなかったでいろいろやらないとなぁ……」


 そんなことを話しながらギルド職員が来るのを待っていると、約束の時間がきた。


「……0か」


「……まさか1つのギルドも来ないとは思いませんでした」


 ラウィズもまさか0とは予想しておらず、酷く驚いた様子であった


「まぁ……仕方ないか」


 空阿は椅子から立ち上がると、


「例の計画よろしくね」


「お任せください」


 ラウィズにそう告げ、ある場所に向かった。


 空を飛んで移動すること十数分。目的の場所にたどり着き、着陸するとシャラスを召喚した。目的の場所とは、スータリアから少し離れたところにある街であった。


「シャラス。透明にしてくれ」


「お任せを!!」


 召喚すると同時に胸元に飛び込んできたシャラスにそう命令すると、シャラスは尻尾を振りながら、空阿の体と自身の体を透明にしていく。 


「ありがとう、シャラス」


「お役に立てたようでうれしいです!!」


 空阿はシャラスを抱きかかえながら街の中へと入っていく。街の入り口には門番がいたが、空阿達に気が付くことは無かった。


 空阿達は街の中に入ると領主館を目指して歩いていく。


「栄えてるなぁ、この街は……」


 街の中を歩いていると、街の人が来ている服、売っている物、建物といったものからスータリアの街と比べて発展しているのが分かるほど、活気に溢れていた。


 シャラスを撫でながら歩いていく空阿は、街の中でも大きな建物の中に入っていき、建物内のある場所を目指す。


「ここか……」


 目的の部屋を見つけた空阿は、部屋の中に入り透明化を解除すると、そこにいた人物に話しかける。


「失礼します」


 その人物は声を掛けられるとゆっくり振り向き、空阿の存在に気が付くと立ち上がった。


「これは、これは、空阿様ですね。お待ちしておりました」


 笑顔でそう答えた人物は、眼鏡をかけた優しそうな雰囲気の男であった。


「どうぞこちらにお座りください」


 空阿は勧められるがままにソファーに座ると、机を挟んだ反対側のソファーにその男も座った。


「今日来ていただいたということは、手紙を読んでいただけたということですか?」


「えぇ、読みました」


「それは良かったです。もしかしたら無視されるのではと思っていましたので」


 空阿は数日前に手紙を受け取っており、手紙には内密の話がしたいということ、会談の日時と場所だけが記されいた。怪しいと思いながらも、ラウィズ達と相談した結果会ってみることにしたのであった。


「自己紹介がまだでしたね。私、ルシエーラの領主を務めている、テレス・ウェスペルと申します」


 そう言ってテレスはにこっりと笑ったが、口元だけが笑っており、その目は笑っていなかった。


「……私は、スータリア改めディアヘルの領主、苫芝空阿です」


 空阿は手を前に差し出して、テレスと握手を交わした。


「さっそくですが、話とは何ですか?」


「そうですね、あまり時間をかけても仕方ないので、さっそく今日お呼びした理由をお話しします――――」


 テレスが言うには、ルシエーラとディアヘルの間で秘密の協定を結びたいとのことで、その協定の内容というのは、お互いの街に対して侵略行為を行わない、定期的な情報交換の場を設ける、困ったことが起こった際に協力するといったものであった。


「……何故、急に協定を結ぼうと考えたのか教えていただいても?」


 テレスの説明を聞いた空阿は疑問に思った。


 スパイがいるなぁ……。まぁ、それは別にいいとして……あの戦いを見られたのか……?近くに気配は感じなかったけど……。


 空阿がそんなことを考えていると、


「それは……ディアヘルにスパイを送り込んでいたからですね。スパイの情報をもとに、戦うのは得策ではないと考えました」


 表情を一切崩さずにそう答えるテレス。悪びれる様子は全く感じることができなかった。


「そんなことを言っても大丈夫なんですか?」


「はい。協定を結びますので正直に言っておいた方が良いかと考えましてね。それに、ディアヘルにスパイがいるのは予想しておられると思いますので」


 空阿はテレスをジッと見つめる。


 ……何を考えているか分からない奴だな。けど、協定を結ぶこと自体は悪くないか……。


「……協定を結んでもいいと考えています。ですが、条件を加えてもいいですか?」


「条件次第ですね」


「条件ですが――――」


 空阿の言う条件とは、お互いの街の商人を受け入れること、貿易を行うことというものであった。


「なるほど……」


 テレスは少し黙って空阿の提案について考えた。


「……分かりました。その条件を飲みましょう」


 テレスとしては、空阿とは周りの街とは秘密裏に繋がっておきたいと考えていたため、(おおやけ)に承認を受け入れるということを発表は出来ないということ、貿易に関しても秘密裏に行うことが条件ということを伝えつつも、空阿の提案した条件を承諾した。


 その後は今回の話し合いで決まったことについての詳細を詰めて、紙にまとめる作業を行い、お開きという流れになったところで、


「……では、話はここまでとして、少々お待ちください。()ぐに戻りますので」


 そう言い、テレスは部屋を出ていくと、誰かを連れて部屋に戻ってきた。


「お待たせしました」


 テレスが連れてきたのは、赤髪と青髪の2人の少女で、両者の手には手錠がかけられており、衣服は粗末なものを着ていた。


 何故2人の少女を連れてきたのか、空阿が疑問に思っていると、


「この2人は魔族と人間のハーフなのですが、やはりどうしても、魔族の血が混じっているということもあり、街の住人から受け入れられませんでした。それに、そのままにしておいても街の住人から何をされるか分からなかったので、しかたなく罪人として領主館で保護しておりました」


 そう説明するとテレスは2人を前にぐっと押し出して、


「ですが、空阿様であればそういった偏見もなく接していただけるのではないかと思いまして。空阿様がよろしければ、この2人を引き取っていただけませんか?」


 テレスは空阿のことをジッと見つめた。


「なるほど……」


 空阿は2人の少女を見つめたが、2人とも俯いており、表情までは読み取ることができなかった。


 ……まぁ、考えるまでもないか。


「……分かりました。2人を引き取ります」


 空阿がそう答えると、テレスはニッコリと笑った。


「それは良かったです。さぁ、2人とも空阿様に挨拶をしなさい」


 テレスがそう言うと、2人の少女はおずおずと顔をあげると、


「……イチです」


「……ニです」


 小さな声で名前を言った。


「……そうか、2人ともよろしくね」


 イチとニか……。適当に名前を付けられた感じか……。


「それでは、空阿様、今後ともよろしくお願いします」


「えぇ、今後とも良き関係でいられることを願っています」


 空阿はテレスは握手を交わすと、2人を連れてルシエーラを後にした。


 悪魔の背中に乗ってディアヘルに帰る途中、空阿はイチとニに話しかけてみた。


「……2人は好きな物とかあるの?」


 空阿の質問に対して、2人の少女は空阿の方を向かずに、


「……特にありません」


 そう答えるだけで、2人の表情は相変わらず暗い。


「そっか……」


 うーん……。簡単に心を開いてはくれないか。


 それでも、空阿はめげずに2人に話しかける。


「2人は海を見たことはある?」


「……ありません」


「そっかー……じゃあ、今度一緒に見に行こうか」


 2人は空阿の方をチラッと見たが、すぐに顔をそらして、


「……はい」


 そう答えたが、その声はどこか期待や嬉しさが含まれていた。


 ……まぁ、少しづつ仲を深めていけばいいか。


 その後も空阿は2人に話しかけながら、ディアヘルへと帰るのであった。

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