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【17】会議に戻ったけど……

 領主館に戻った空阿は捕らえた兵士を地下牢に閉じ込めると悪魔達に見張りを任せて会議室へと向かった。


 会議室の扉を開けて中に入ると、未だに議論は続いていた。


「すまない。時間がかかった」


 空阿がそう言いながら席に着くと、一同の視線が集まった。


「……どうした?」


 空阿のことを見つめたまま固まっているのを疑問に思っていると、シアスが近づいてきた。


「お帰りなさいませ」


「あぁ、問題はなかったか?」


「はい。大丈夫です」


「そうか、それならいいんだ」


 そう言うと、空阿は書類を手に取り、眺めた。


 えーと、今はどこのギルドの話だろうか……。


 そんなことを考えていると、


「あ、あの、空阿様ですか?」


「?そうだけど……」


「えっと……そのお姿はいったい……」


 そう言われて自身の体を見る空阿。


「あ、忘れてた」


 空阿は兵士に変身したままなのを忘れており、思い出したかのようにプッセを呼び出した。


「プッセ。解いてくれ」


「かしこまりました」


 プッセが空阿に手をかざすと、兵士に変身した時と同じように黒い霧に包まれて、霧が晴れるとそこには元の空阿の姿があった。


「ごめんごめん。解除するの忘れてたよ」


 空阿が椅子に座り直すと、1人のギルド職員が立ち上がった。


「そ、それはいったい……」


 ギルド職員は訳が分からないといった様子で空阿に質問した。


「これ?これは……まぁ、魔法かな。そんなことより会議を続けようか」


 空阿の返答にギルド職員は納得いっていないようであったが、空阿が会議を続けるように促したため、椅子に座った。


「それじゃあ、今の状況は?」


「今は魔術師ギルドの問題について議論しているところです」


「そうか。じゃあ、続けて」


「は、はい」


 そう言うと、魔術師ギルドの職員が立ち上がり、問題について語り出した。


「現在の魔術師ギルドには職員が不足しておりまして、研究も進まないといった現状です」


「何故、職員が不足しているのですか?」


「……この街にはギルド職員に採用されるほどの人材がおりませんので……」


 ギルド職員はそう答えると、ハンカチを取り出し額の汗を拭う。


「……どうしていないんですか?」


 疑問に思った空阿がふと尋ねると、なにやら少し間があったがギルド職員は答えた。


「えっと……この街に魔術師学校が無いからですね。ほとんどの人はもっと大きな街の魔術師ギルドに就職しますし」


 その言葉からは少し、小馬鹿にした雰囲気が感じ取れたが、周りのギルド職員達もそんな当たり前のことをわざわざ聞くのかという顔をしていた。


「そうですか……。では、何でこの街に学校が無いんですかね?」


 再び質問した空阿であったが、


「はぁ……。それは、建てるためのお金が無いのと、この街だと通うのにお金がかかり過ぎて、誰も通わないからですよ」


 呆れたようにそう答えるギルド職員。その態度にシアスはイライラしていたが、空阿は特に気にすることなく質問を続けた。


「ちなみにですけど、皆さんが所属しているギルドの1か月の給料は平均いくらぐらいですかね?」


 ギルド職員達はその質問の意図を計りかねて、お互いに顔を見合わせていたが、1人また1人と答えた。額はそれぞれ違ったが、一番高いギルドと一番低いギルドを比べると2倍ほどの差があった。


「ふーむ……」


 それぞれのギルドの平均給与を聞いた空阿は黙り、あることを考えていた。


 ……何とかギルド同士に繋がりを持たせられないかなぁ。


 それぞれのギルドは他のギルドに干渉することは無いため、手助けをするといったことはしないだけでなく、他のギルドには負けられないといった感情を持っていた。そのため、各ギルドは自分達だけでギルドを発展させなくてはいけない状況であった。


 その状態を何とかできないかと空阿は考えており、そんなことを考えているとはつゆ知らず、会議は進んでいくのであった。


「――――他に質問がある方は?」


「……では、魔術師ギルドの問題点は以上です」


 魔術師ギルドは自分達が洗い出してきた問題点とそれに対する解決策を述べ終わると、椅子に座った。


「なるほど、分かりました。では、続いて――――」


 会議は進んでいくが、空阿は相変わらずギルド同士の協力について考えていた。


 そうだなぁ……。定期的にこうやって会議でも開くか?……でもそれだと、問題が発生してから伝えるまでに時間がかかるか。


 中々良い案が思い浮かばず、頭を悩ませていた空阿であったが、ある案が思い浮かんだ。


「……そうだ!!」


 会議室にいた者達は突然声を上げた空阿に驚いていたが、空阿は続けた。


「皆さんは他のギルドと協力するつもりはありますか?」


 その言葉を聞いてそれぞれのギルド職員は難しい顔をしており、協力するつもりはないと顔で語っていた。


「……まぁ、その顔を見れば何て言いたいのかわかります。しかし、各ギルドの問題点を見る限り、他のギルドと協力すれば解決できる問題点があるのも事実ですよね?」


 ギルド職員達もそう思っていた節があったのか、否定する者はいなかった。


「協力しろと言っても簡単に協力はしないと思いますので、皆さんのギルドには、領主を頂点とした組織の一部になってもらいますね」


 空阿の発言をあまり理解できないと言った様子であったが、


「簡単に説明しますと――――」


 空阿は、領主を経由して、それぞれのギルドの繋がりを強くするという狙いのもと、領主を頂点とした組織の一部にギルドを組み込んでしまうこと。また、領主を経由することによって、街としての支援も行えるという利点があるということなどを簡単に説明した。


「――――と、まぁ、そんな感じです」


 空阿の説明を受けたギルド職員達はというと、


「そ、それは納得しかねます!!」


「いきなり体制を変えるとなると……」


 そんな感じで反発をしてきたが、想定内であったため、空阿は落ち着いて答えた。


「まぁ、すぐには納得できないと思います。後日詳しい内容を書いた書類を各ギルドに送りますので、それを見て判断してください」


 そう言うと、空阿は立ち上がり、会議室の扉の方へと歩き出した。


「え、どちらへ?」


 空阿の突然の行動に思わずギルド職員は呼び止めた。


「いえ、これ以上ここにいても仕方ないので」


 それだけ言うと、空阿は扉を開いて会議室から出ていったしまった。ギルド職員はもちろんのこと、ラウィズやクルースも空阿の行動にただ呆然(ぼうぜん)とするだけであった。


 空阿は会議室をあとにすると、領主館内を歩いていた。


(いいのか?会議を途中で抜け出して)


「あぁ、あれ以上あそこにいても仕方ないからな」


(仕方ない?どうしてさ)


「俺の提案は聞いていただろ?」


(聞いていたぞ。領主を頂点とした組織を作るんだろ?)


「そう、それ。それが設立するまでは、ギルドの問題点を聞いても意味が無い」


(どうして意味が無いんだ?)


「どのギルドが組織に加入するかどうか決まってないからな。それなのに聞いても……まぁ全くとは言わないけど、ほとんど無駄だからな」


(ふーん。なるほどね)


 そんなことを話していると、空阿は目的の場所にたどり着いて扉を開けた。開けた先は、薄暗く、ジメジメとしており、どこか肌寒さを覚える地下牢であった。


 空阿は地下牢の中を歩いていく、左右に広がる牢屋は空であったが、奥の方に下級悪魔の姿があり、そこまで歩いていく。


 そして、目的の牢屋の前に立つと、


「6人か……」


 そう呟いた。


「お、お前は!!」


 空阿の存在に気が付いた兵士達は少しでも離れたいと考えたのか、牢屋の隅へと移動した。


「まずは……おまえだな」


 空阿は1人の兵士を選ぶと、ある部屋へと連れていくよう悪魔に指示を出した。


「な、なにをするつもりだ!!や、やめろ!!離せ!!」


 連れていかれる間、兵士は暴れていたが、努力もむなしく部屋の中に入れられると、部屋の中にあった椅子の上に拘束された。


 拘束が終わると、


「どうも」


 空阿は挨拶をして、兵士の前に立った。


「んー!!んー!!」


 兵士は暴れるも、ガッチリと拘束されており、身体は全く動かなかった。空阿はそんな兵士を気にも留めず、悪魔召喚(サモンデビル)を発動させて悪魔を選んでいた。


「それじゃあ……こいつにするか」


 空阿はどの悪魔にするか決めると、魔力を込めて召喚した。


 召喚された悪魔は片手に本を持った男性であったが、


「召喚していただき、ありがとうございます」


 そう言ってあげた顔は笑った若い女性であった。


「そうだな……。おまえは……タリオンだ」


「頂いたお名前、大事にいたします」


 タリオンは再び頭を下げた。


「さっそくだが、タリオン。お前にはこの者から情報を引き出してほしい」


「情報ですか?」


「あぁ、そうだ。どの街の兵士なのか、何故この街に来たのか、家族は誰か、上司は誰か……とにかく事細かく、こいつのことについて調べてもらいたい」


「なるほど、方法はどうなさいますか?」


「お前に任せる。ただ、快楽のために必要以上に痛めつけるのは禁止とする」


「かしこまりました」


 そう言って立ち上がったタリオンの顔は愉悦顔の少年の顔であった。


「そいつの他にも5人いるから任せたぞ」


「お任せください」


 空阿が部屋を出ると、タリオンは頭を上げて兵士の元に近づいていった。


「……あまり時間を掛けたくないので、正直に話してくださいね」


 タリオンは真顔の老婆の顔で兵士に近づいていく。兵士は近づいてくるタリオンを見つめながら震えることしかできなかった。


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