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【12】女騎士と会話

「なぁ、もういい加減食べてくれないか?」


 空阿は領主館にある地下牢を訪れていた。


「ふざけるな!!魔族からの施しなど受けてたまるか!!」


「はぁ……。だ・か・ら!!俺は魔族じゃないって何回言えば分かるんだよ!!」


 空阿が話しているのは、昨日捕らえた女騎士であった。


「騙されるものか!!そう言って、民衆も騙したのだろう!!」


「どうすれば信じてくれるんだよ……」


 何故空阿がこんなところに訪れているのかというと、それは時を(さかのぼ)ること数時間前――――


「とりあえず、こんなところで大丈夫かな?」


「そうですねぇ……。領主様の考えを踏まえつつ、この街を維持するとなると少し厳しいところはありますが、何とかなりそうかなってところですかね……」


 街の惨状を何とかしようと3人で話し合っていたのだが、現状を回復するためにやることが多すぎるため、3人では厳しいのが現実であった。


「俺は専門的な知識がないからなぁ……。。ほとんど2人に任せた感じになっちゃて申し訳ない」


「いえ、これが私たちの仕事なのですから、問題などありません」


「そうです。むしろ、もっと仕事をくださってもよいくらいです」


「……とんでもない量の仕事があるけど、絶対に無理な業務をするなよ?」


「まぁ、それは、はい」


 ……深夜は悪魔に見張らせておく必要がありそうだな。


「……はぁ、それじゃあ、次にやることは」


「とりあえず、現状までで決まったことを住民たちにこれらを発表すること、それに領主館で働く者の募集でしょうね」


「それじゃあ、任せちゃっても大丈夫かな?」


「はい。お任せください」


 空阿はクルースとラウィズを残して会議室を後にした。


「はぁ……」


 空阿は廊下をトボトボ歩いていた。


(なーにため息なんてついてるんだよ)


「なんかさ、領主としてこのままでいいのかなって」


(どういう意味だ?)


「いやさ、街の決め事とかはほとんどクルースとラウィズが決めちゃったし、領主として周りに任せてばかりでいいのかなって思ってさ」


(ぷっ、あははは。そんなことで悩んでたのかよ)


「そんなことって……。俺にとってはけっこう重要なことなんだぞ」


(へー、なんでさ)


 空阿は窓に手をかけて街の風景を眺めた。


「……俺は、この街の住人からしたら侵略者と変わらない。だから、せめてこの街のためになることをしたいんだよ……。けど、今の俺は自分の理想をクルースやラウィズに任せてばかりで、俺自身は何もしてないんじゃないかって」


(ふーん。まぁ、でもそんなもんなんじゃねぇの?)


「どういうことだ?」


(例えばだが、クルースやラウィズに砦を建てろって言ったら、人を雇って材料を集めて建てるが、時間がかかるだろうさ。だけど、お前なら普通の人間よりも力のある悪魔を使って、クルースやラウィズよりも早く安く建てられる。つまりだ、お前やクルースやラウィズにそれぞれ向いてることをすればいいんだよ。今回はたまたまクルースやラウィズに向いてることだったって訳だ)


「そういうもんか」


(そういうもんだ)


 まさかカブルに励まされるなんてな。


(でも、お前は領主なんだ。お前にはこの街をどんな風にするのか決める権利がある。だがな、その決定に対して責任をとるのも、やっぱり領主のお前なんだよ。そのことを忘れるなよ)


「……あぁ、わかってるさ」


 領主としての責任か……。


 ついこの間までただの学生であった空阿には実感のわかない言葉であったが、その言葉を忘れないように深く胸に刻んだのであった。


「……てか、おまえそんなキャラだったか?」


(なにがだ?)


「そんなまともなことをいうキャラじゃなかっただろ」


(何言ってんだよ。俺は前から謙虚で協力的でお前の味方だったじゃないか)


「あー、はいはい」


(なんだよ。つれねぇな)


 空阿とカブルがそんなやり取りをしていると、シアスが近づいてきた。


「空阿様少々よろしいでしょうか?」


「どうした?」


「昨日捕らえた女騎士のことなのですが」


 女騎士……。女騎士……。あっ、昨日会議の途中でシアスが連れてきた奴か。


「あぁ、それがどうしたの?」


「実は、昨夜から何も食べていなくてですね」


「え、どうして?」


「それが、魔族からの施しなど受けないと申しておりまして」


「なるほど……。うーん、1回話さないといけないと思ってたから、俺が会って話してみるよ」


(かしこ)まりました。それでは、案内させていただきます」


 空阿はアシスに連れられて地下牢へと向かった。


 地下牢にたどり着くと、頭の甲冑を脱がされた女騎士が檻の中にいた。


「!!来たか魔族!!」


「はぁ……。俺たちは魔族ではありません」


「そのようなこと信じられるか!!」


 女騎士はキッと空阿を睨みつけた。


「んー。それじゃあ、それはいったん置いとくとして」


 空阿はしゃがんで女騎士と目線の高さを合わせた。


「ご飯食べてくれませんか?」


「そのようなものなどいらん!!」


 女騎士は顔を背けた。


 ……どうしたもんかなぁ。


 ――――そして、現在に至る


 どうしたら、俺たちが魔族じゃないって信じてくれるんだろうか……。魔族じゃない証明なんてどうすればいいんだよ……。


 空阿はこのどうしようもない状況に頭を悩ませていた。


(そんな奴ほっとけばいいだろう)


「うーん。でもなぁ……」


(なんだよ。惚れたのか?)


「何言ってんだお前は!!」


(じゃあなんでだよ)


「なんとなくだけど。悪いやつじゃないと思うんだよ」


(まぁ、悪いやつではないだろうな。アホだとは思うけど)


「おい」


 空阿の様子を見ていた女騎士気味の悪いものを見る目をして、


「1人でブツブツと何を言っている!!」


「あー、これは……。独り言だよ」


 咄嗟に言い訳をしたが、


「独り言?おかしなやつだ……」


 変な人認定を受けてしまった。


(カッカッカ。こりゃ傑作だ。ブツブツと独り言を言うおかしなやつだと思われてるんだろうな)


「……もう、お前だまれ……」


 そんなやり取りをしていると、シアスが食事を持って歩いてきた。


「言われた通りにお食事をお持ちしました」


「ありがとう」


 空阿は食事を受け取ると、1つを女騎士の前へ、もう1つを自分の足元においてドカッと床に座った。


「よし、腹を割って話そうか」


「何を言って……」


「俺のことを信用できないのももちろん理解できる。だけどな、このままお互いのことを知らないままってのもよくないだろ?だから、お互いのことを話し合おうか」


 女騎士は何を言っているんだって顔をしたが、空阿は気に止めず食事を食べ始めた。


「今はまだ料理人を雇ってないから、ラウィズが作ってくれたんだけど、おいしいから食べてみな」


 女騎士は食事に手を付けず、じっと空阿を見ていた。


「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺は苫芝(とましば)空阿(くうあ)って言うんだけど、君は?」


 空阿の問いかけに少しためらった様子を見せた女騎士であったが、


「……ロレーヴァだ」


「ん?」


「ロレーヴァ・ペルンシスだ!!」


 そう言うと、ロレーヴァは勢いよく食事を食べ始めた。


「……そうか、よろしくなロレーヴァ」


 空阿はニッコリと笑った。


 しばらく無言で食事を続けていたが、


「……貴様は本当に魔族ではないのか?」


「あぁ、魔族じゃないよ」


「では、何者なのだ。姿は人間のようだが」


「あー、確かにそう思うよなぁ……。それじゃあ、ここまでの経緯を話そうか」


 空阿は召喚されて処刑されそうになったこと、魔族の所に向かったけど捕まりそうになったこと、自分の領地を持とうと決めたことなど召喚されてからの経緯を全て説明した。ロレーヴァは疑わしいものを見る目をしていたが、最後まで話を遮らずに聞いていた。


「まぁ、そんなところかな」


「……にわかには信じられない内容であるが、信じることにしよう」


「ロレーヴァは?」


「私か?」


「そう、ロレーヴァの話も聞かせてくれよ」


「私は……。話すことなどない……」


「……そっか」


 いきなりは話してくれないか……。


「じゃあ、ここに来た経緯だけ教えてよ」


「それは……」


 ロレーヴァは口ごもって話しにくそうにしていた。


「安心していいよ。別にここのことを教えた人物を殺すとかしないから」


 ロレーヴァは空阿を見つめて、ゆっくりと口を開いた。


「……誰かは言えないが、ここが占領されたと聞いてきたんだ」


「んー。でも、何で1人で来たんだ?もっと人数をかけて来ればいいのに」


「……」


 ロレーヴァは再び黙ってしまった。答えるまで待っていた空阿であったが、


 ……話してくれなさそうか。


 何てことないことを話しているうちに食事も食べ終わり、特に話すことも無くなったため、ロレーヴァの処遇について考えていた。


 ……どうしようかなぁ。このままここに入れておくってのもなぁ……。


「……そうだ。一緒に街でも見に行ってみる?」

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