【10】占領後の処分
空阿が兵士長を倒していた頃、アシスも街中の制圧が完了していた。そして、そんな出来事から数十分後のこと、街の住民が広場に集められていた。
「何が始まるんだ……?」
「どうやら魔族が領主様を殺したらしいぞ」
「それは本当か!?」
「あぁ、この街ももう終わりかもな……」
何故集められたのか分からない民衆たちは、これから起きるであろうことを予想して口々に不安を漏らしていた。
そんな状況の中、広場に設置された台に備え付けられた階段を上っていく空阿は台の上に上がると、民衆が静かになるのを待った。
最初はざわついていた民衆であったが、空阿の存在に気が付いて次第に静かになっていき、誰1人言葉を発さなくなった。
「……えー、では、まずは自己紹介をしますね。俺はこの街の新領主となる苫芝空阿です」
その言葉を聞いた民衆には動揺が走った。
「新領主……?」
「魔族に支配されるってことか?」
「俺たちは無事なんだろうか……」
再びざわめき出したが、空阿は構わず続けた。
「混乱されていると思いますので、簡単に説明しますね」
空阿は、自分が魔族の味方でも、人間の味方でもないこと。また、領民には一切の危害を加えないが、反乱を企らむこと、また、それに類することを行うようなことがあれば、容赦なく処罰を下すことを説明した。
「説明はこんなところですね。気になることもあると思うので、質問がある方はいますか?」
シーンといった効果音が聞こえてくるほどの静寂がその場を支配した。
まぁ、いきなり街を占領してきた奴に質問はありますか?って聞かれても質問しづらいよな。
そんなことを考えていると、1人の男が手を挙げた。
「お、そこの緑の服を着た人。何かありますか」
「は、はい……。私は行商を生業としておりまして、この街から離れることはできますでしょうか……?あ、もちろんこの街のことは誰にも言いません!!」
少し太ったその男性の声は少し震えており、空阿のことを恐れているのを感じ取れた。
「うーん……」
どのみち、いつまでもここのことを隠しておくことはできないだろうし、行商人が出入りしようが遅かれ早かれだよなぁ……。
「そうですねぇ、いいでしょう。街の出入りは許可します」
「ほ、本当ですか!?」
「はい。この街に残るのも、出ていくのも自由にしていいですよ」
まさか出入りが可能だとは思っておらず、民衆は空阿の言葉に驚いた。
「出入り自由だってよ」
「でも、罠なんじゃないか?出ていくって言ったら処刑されるとか」
「出ていくにしてもそんな金ねぇよ……」
うーん、皆出ていきたいけど、出ていくのが怖かったり、出ていくお金がなかったりって感じだな。まぁ、領民が0人になるってことはないか。
「あ、あの!!」
「ん?そこの赤い服を着た人。どうしました?」
「その……、税金とかってどうなりますか……?」
「あー、税金ねぇ」
税金かぁ、やっぱりそこらへん気になるよね……。でも、俺も詳しくないからなぁ……。
「そこら辺に関しては、またお知らせしますね。なんせ、占領したばかりで、この街に関して詳しくないので」
「わ、分かりました……」
1つ2つと質問が上がったのもあり、その後いくつもの質問が上がったが、1つ1つに答えられる範囲で答えていき、一通り質問大会が終わったため、その場はお開きとなって空阿は領主館へと戻った。
領主館のある一室。そこでは、拘束された人間が数人床に座らせられており、その者達の前で空阿は椅子に座っており、その両脇にシアスとクルスハが立っていた。
「では、今からあなたたちをどうするか決めたいと思います」
そこで行われているのは、前領主とその補佐官の処遇決めである。
「お、お助けを!!」
「私は、長年この領地で過ごしていました!!この領地に関することでしたら、私にお任せください!!」
「な、なにを言っておる!!私の方がこの領地には長く住んでおります!!」
「私は、領主でしたので、国への根回しはお任せください!!」
「貴様何を言ってるか!!ろくに仕事もしてないで、そのようなことができるわけないだろう!!」
「な、なんだと!?」
そこにいた者達は、命を助けてもらおうと自分をアピールする者や他人を貶す者、諦めているのか、それとも別のことを考えているのか全く喋らない者といったように、様々な様子であった。
……うるさいなぁ。……まぁ、でも、急に命を奪われそうになったら、何とかしようとあがくのも分からなくないからなぁ。
その様子を懐かしく思いながらも、ボーっと見ていると、
「……黙れ、貴様ら!!空阿様の話が聞けぬであろう!!」
クルスハが大声で威圧すると、先ほどまで騒いでいたのが嘘だったかのように静まり返った。
「……では、静かになったので、決めますか。あなたたちの処分を」
前領主たちの間に緊張が走った。
「実際の所、あなたたちが死んでようが、生きてようがどうでもいいっていうのが正直なところなんですよね」
(だったら、殺せばいいじゃん)
「……うるさい……。で、あなたたちはどうしたいですか?左から順に言ってください」
(殺せばいいだろ)
「……だから、うるさい……。ちなみに、この街から離れようが別に構いません。そのことで、何か罰を与えるってこともしませんが、財産はすべていただきますね」
その言葉を聞いた前領主達はお互いに顔を見合ったが、1人1人と自分の望みを言っていった。
「なるほど、7人中5人が出ていきたくて、2人は残りたいと……」
(殺しちまおうよ~。ねぇ~)
「だから、うるさい!!」
「え?」
あ、しまった……。
カブルがあまりにもしつこかったため、空阿は思わず大声を出してしまった。
「あー、申し訳ない。独り言だから気にしないでください」
「は、はぁ……」
前領主達は不思議そうな顔をしながらも、空阿のことが恐ろしかったのか、それ以上追求することは無かった。
「コホン。では、話を戻しますね。じゃあ、さっそく出ていく5人はクルスハ頼んだよ」
「はっ、分かりました」
「外にいる下級悪魔2体にクルスハの命令を聞くように言っといたから、うまく使ってくれ」
「ありがとうございます。では、ついてきなさい」
クルスハは5人を連れて部屋の外へと出ていった。
「で、お2人の名前を教えていただいても?」
「私は、クルース・ゼニファブルです」
「私は、ラウィズ・ビラインです」
そう言うと、2人は頭を下げた。
「質問なんですけど、クルースさんは何で残ろうとお考えに?自分で言うのもあれなんですが」
「私は、人類や魔族のどちらが支配するといったものに興味がありませんでした。仕事さえさせていただければ、誰が支配者であろうと構いません」
そう言った青年は、眼鏡をかけて賢そうではあるが、目が虚ろとしており、どこか危険な雰囲気をかもし出していた。
うーん、俗に言うワーカホリックってやつかな。……てか、目に生気が宿ってない……。
「そうですか……。ちなみに、何の仕事をしていたのですか?」
「税金など街の財政に関する仕事をしておりました」
お、ちょうど欲しいなと思っていた人材だ。一応採用かな。
「なるほど、じゃあ、ラウィズさんはどうして残ろうと?」
「はい。私は、強い方にお仕えしたいのです」
「……」
「……」
「え、そんな理由?」
「はい!!」
そうはっきりと答えた女性は、凛とした雰囲気の美しい女性であり、紫色の目を見てると吸い込まれそうな魅力を持っていた。
……あー、なんか変な奴だけ残っちゃたな……。
「あのー、ちなみに、何の仕事をしていたのでしょうか」
「秘書をしておりましたが、基本的なことであればどの仕事も手伝えます」
「なるほど……」
……危険なにおいがする。
「あれ?でも、強い人に仕えたいとのことでしたが、何で前領主の秘書をしていたのですか?」
「それは仕事だったからです」
「仕事だから……。それだけですか?」
「はい」
そうきっぱりと言い切るラウィズはニッコリと笑った。何故か追及してはいけないと感じた空阿は特に掘り下げることはしなかった。
「……分かりました。お2人とも残りたいとのことなので、採用します」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。身を粉にして働きます」
「あー、無理しない程度で頑張ってくださいね」
……大丈夫かなぁ。この2人。
「色々決めないといけないことはあるのですが、とりあえず、今日はもう遅いので、また明日話し合うことにしましょう」
そうして、前領主達の処分は終わり、疲れていた空阿は寝室に入って、ベッドに横になるとそのまま眠ってしまった。




