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狐のあくび  作者: はしご
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第47話「何者」


 私はようやく魔族領に帰ってきた。


 セレネアさんたちと再会し、無事ロゼを魔族領に送り届けることも出来た。最高幹部の人たちともまた会えたし、そして何より、魔王様とまた会えた。


 なのに・・・


「・・・それじゃあ、私は部屋で少しロゼと話してくるから」

「は、はい・・・」


 あの後、私たちは魔王城の中へと入った。取り敢えず、セレネアさんたちは客室へ。私は最高幹部の人たちと会議室へ向かった。


 そして、魔王様はロゼと一緒に自室へと向かっていった。・・・二人で、魔王様の部屋に。


 二人で。


「・・・カゲハ、いくら羨ましいからといって殺気を放つのはやめんか」

「別に、羨ましくなんか・・・」


 せっかくまた会えたのに魔王様はロゼのことばかり見てるとかそもそも二人はどんな関係なのかとか二人でどんな話をするのかとか、別に気になってないし。


「・・・それより、なんで会議室?」

「我々最高幹部が集まる場所は、基本的に会議室くらいしかないからな。カゲハには、人族領にいたときのことについて話を聞きたい」

「なるほど」


 私の質問に対し、メフィルさんが答える。それから、全員で会議室の円卓の椅子に腰掛けた。


「ねぇ、噂は聞いているよ〜!」

「・・・噂?」


 すると、ルナさんが楽しそうにそう言った。噂って、どういうことだろう。


「人族領に入り込んだ新幹部、魔閃妖狐がリーノフェルト王国の騎士団の副団長を殺したって!」

「・・・まあ、殺したけど」

「やっぱり本当なんだ! 凄いじゃない!!」


 でも、あれは元はと言えば私が捕まって、そこから逃げ出すために殺したんだ。自分の失敗の尻拭いをしたようなもので、何も凄いことじゃ・・・


「・・・それにカゲハちゃん、人類最強って言われてる男と戦ったんでしょう? それも、人々を守るために」

「でも、私は・・・」


 ルナさんの言葉に私は口ごもる。その時、レイヴンさんが私に向けて口を開いた。


「だが、その姿を見た人はたくさんいる。・・・カゲハに助けられた人がたくさんいるんだぞ。そのこともあって、この数日で七人目の最高幹部のことは人族魔族ともに知れ渡ったしな!! そのことは、誇っていいと思うぞ」

「っ・・・」


 誇る、か。なんというか、少し複雑な気分だ。実際は、私はレイス・ミクシードには手も足も出なかったわけだし。


 でもまあ、ルナさんやレイヴンさんがそう言ってくれるのであれば、取り敢えずはその言葉は受け入れておこう。


「・・・でも、私が副団長殺したとか、どうやって伝わったの?」

「そりゃあ人族領で情報収集してきたのさ」

「情報収集って・・・どうやって?」

「ウチには優秀なスパイがたくさんいるからね。人族領の情報は筒抜けなのだよ!」


 スパイ。なるほどそんなものを送り込んでいたのか。


 でもスパイがいたとして、どうやって得た情報をこちらに送っているんだろうか。流石に毎回あの山脈を越えるわけにもいかないだろうし、この世界には通信機器もない。思念魔法だって、遠すぎる距離では使えないはずだ。


「そろそろ本題へ移るぞ。・・・カゲハ。あの後のことについて、詳しい状況を確認しておきたい」

「・・・あ、うん」


 メフィルさんの言葉で、私は思考を一旦止めた。まあ、気になることはまた今度聞くことにしよう。


 ・・・それより、詳しい状況、か。やっぱりここは、正直に話すべきだろう。


 私は恐る恐る、おじいちゃんへと視線を向けた。


「・・・おじいちゃん」

「ん、なんじゃ?」

「私、レイスとの戦いで・・・・・・魔力支配を、使った」


 それは、おじいちゃんには使うなと言われた技だった。それでも私は、レイスに負けないためにアレを使ってしまった。


 まず、そのことは言わなければならないと思った。


「今こうして生きておるということは、一応は成功したんじゃろうが・・・当然、負荷も大きかったじゃろう?」

「・・・うん」

「じゃがそれでもやったのは、負けないため、か?」

「・・・」


 俯く私に、おじいちゃんは呆れたようなため息をついた。


「ならば次からは完全に制御できるよう、しっかり訓練しておくんじゃな」

「・・・え?」


 そして、そんな想像だにしなかった返答に、私は思わず声を漏らした。おじいちゃんは絶対に使うなって言ってたけど、これってもしかして・・・


「・・・いい、の?」

「カゲハのことじゃ。同じ状況になればきっとまた使うじゃろうしな。きっとそれは止められんし、事実多くの命を救ったのじゃから止めようとも思わんよ。その代わり、自分の身を粗末にするんじゃないぞ」

「・・・わかった!」


 予想外にもおじいちゃんからの許しを得ることができた。嬉しいと同時に、おじいちゃんからの忠告を忘れぬよう、心に刻んだ。


「おい、先程から何の話をしているのか分からないのだが」

「なになに魔力支配って!? なんか強そー! 俺にも教えてくれよー!!」


 おじいちゃんにしか伝わらない話をしてしまったせいで、全員が首を傾げてしまっている。少し悪いことをした。


 それから私はすぐに、みんなにも魔力支配について説明した。そしてそれを使ってレイスを足止めしたこと、しかし敗れて人族に捕まったこと、そして副団長を殺して逃げたこと、それからロゼやセレネアさんたちと出会ったことなどを改めて説明した。


「・・・なるほど。大体把握した」

「で、でも、そのカゲハさんが助けたロゼっていう人、何者なんでしょうか・・・」


 セイラさんがその疑問を口にする。そしてそれは、皆がずっと胸に抱いていたものでもあった。


 魔王様と同じ悪魔族の少女、ロゼ。魔王様は彼女のことを、いや、彼女の姿のことを、知っていたみたいだけど。


 ・・・今、二人は何を話しているのだろうか。



  ◇◇◇



[SIDE:ロゼ]


「さあ、楽にしてくれ」

「は、はい・・・」


 魔王さんは椅子に座り、テーブルを挟んだ対面の椅子に座るよう僕に促した。この状況で楽にする、なんてのは流石に無理な話だけれど、一応言われた通りにする。


 それにしても・・・この子が魔王なのか。見た目は僕と同い年くらいのただの女の子だ。まあ、あの凄まじい力をこの目で見たわけだから疑ってはいないけれど、改めて考えるとにわかには信じがたい話だ。


「さて、早速本題に入るが、君はヴィリアナと入れ替わったと言っていたな」

「い、言いました・・・」

「では具体的にどうやって入れ替わったのか、教えてくれ」


 魔王さんは静かに、そして真っ直ぐな声音でそう尋ねてきた。魔王さんからは、最初に会った時程じゃないが、凄まじい威圧感が放たれていた。


 怖くて、また泣きそうになる。とても嘘や誤魔化しの出来る状況じゃない。僕は声を震わせながら、事情を正直に話した。


「・・・なるほど。捕まっていたヴィリアナを助けるために、神操魔法を覚えた、と」

「は、はい」


 僕の話を聞き、魔王さんは少し考え込む。


「・・・それはおかしい」

「え?」


 だが、魔王さんはそれを否定した。・・・お、おかしいと言われても、僕、嘘ついてないんだけど・・・


「まず、たったの一年で神操魔法を覚えたというのは、あまりにも非現実的すぎる。あれは本来、人生の全てを掛けても習得できるものはほとんどいない魔法だ」

「で、でも・・・」

「まあ、百歩譲ってそれが出来たとする。・・・だが、心魔反転は不可能だ」

「ど、どうしてですか・・・?」


 魔王さんは淡々と続ける。


「心魔反転というのは、自分と相手の魂を入れ替える魔法だ。だが、これには一つ制約がある」

「・・・制約?」

「互いが、同じ種族であることだ」


 同じ種族でないと使えない。それは初めて知ったけど、どこがおかしいのだろうか。ヴィリアナは悪魔族で、僕も悪魔族になっていたのだから。


「・・・悪魔族は、私とヴィリアナを残して全て絶滅した」

「・・・っ!?」

「もうこの世界には二人しかいないんだよ。だから、もし心魔反転が使えたとしても、不可能なんだ。・・・君が、悪魔族でない限り」


 絶滅、した?


 ・・・そうか。本来悪魔族は二人しかいない。でも僕は異世界から来て、その影響で肉体が悪魔族となった、イレギュラーな存在だ。


 でも、魔王さんはその事を知らない。


「・・・君は、何者だ?」

「ぼ、僕は・・・」


 言ってしまっていいんだろうか。


 ・・・ダメだ。言えるわけがない。だって、勇者召喚は人間の使った魔法で、僕は人間から呼び出された異端者だ。もしその事を話せば、どうなるか分からない。


 それに、相手は魔王だぞ? 人間と敵対する魔族の王様だ。僕が元人間だと知ったら殺すかもしれない。僕からなにか情報を引き出そうと拷問するかもしれない。もしくは、奴隷にされてしまうかもしれない。


 怖い。


 怖くて、そんなこと言えるわけが・・・




「────君、異世界から来たのかい?」

「え?」



 しかし、彼女はあっさりと正解を口にした。


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[一言] さす、まお! 嫉妬するカゲハかわよい
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