1,半宵の依頼人
魔法とかそういうの良いですよね。
美味しいです。
同志よ、いらっしゃいます!?
魔界と人間界。
世界を2つに分けるとするならば、そう分けられるのが常である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・が、そんな世界の中間地点に界境を守る番人は住んでいた。
この人物こそ私。
ミリウ・クストーデ、19歳。
私は果たしてどちらなのか。
魔人か、人間か…。
そんな風に悩む時期もあった気がするが、今は昔。
私はどちらにも属さない謎な存在であると考えてくれればいい。
・・・・・・・いや、別にどう捉えられようが構わないのだけれど。
魔界と人間界の行き来は原則禁止されている中で、唯一自由に動き回れる存在とだけ伝えておこう。
現在この界境という職についているのは私のみ。
どちらの世界からも公認で行き来できる唯一の存在。そう、唯一!
これだけ「唯一」と連呼すれば、そろそろ、私という存在の大切さを認識してくれる方が出てくるかもしれない。
まあ、私以外にもお忍びやらなんやらでお互いの世界を行き来している者たちや、魔人が人間界に住む(逆もまた然り)ことなんかもあるわけではあるのだが。
もちろんそれらすべてを私は理解したうえで報告していない。
職務怠慢だとか仰る方々もいるかもしれないが、そんなレベルの報告をいちいち挙げて居たら報告書書くだけで一日終わる。時間足りない。管理できない。
現在、界境の職についているのは私のみなのだよ。仕事量増やさないでくれ、切実に…。
それに、彼らには彼らなりの言い分も存在するのである。
家族を養うために人間であるということを隠して魔界で働かなければならない者。
技術の進んでいる人間界で修行をし、故郷にその技術を持ち帰り、貧しい村の再建を図りたい者。
身分差どころか種族差に悩みながらも、互いを忘れられない者。
まあ、挙げだすと両手で数えきれない程なのでこのくらいまでとさせて頂く。
お互いの世界に悪い影響を与えるであろう者の侵入は拒み、適切な対処をしてから報告するというのが私の仕事だと認識して頂けると幸いだ。
さて、界境の番人、ミリウ・クストーデにある依頼が舞い込んだのは昨日。
過酷な労働環境とはこのことだと文句を言いたいところではあるのだが、その依頼人の来訪を告げる呼鈴が聞こえたのは半宵。
「ただいま営業時間外です。またのお越しをお待ちしております。」と告げなかった私を誰か褒めてほしい。
しぶしぶ扉を開けた先にいたのは・・・・・・・・・・・。
連載開始記念で連日更新いたします。
本日以降21時更新となります。