87.レオナード国王 side ???
【レオナード・フォン・ギースベルト】
第26代ギースベルト王国国王である彼は、多くの逸話を持つ事で有名な国王である。
賢王として名高い彼は、王国の歴史上初めて、平民から側近を選んだ事でも知られている。また、美醜や家柄に囚われない能力重視による仕組みを作り、彼の元には多くの優秀な者が集まったという。
美醜に囚われない仕組みを作った理由として、彼自身が非常に醜い容姿であったことが上げられる。彼の過去を紐解くと、実の両親に何度も暗殺されかけたという、壮絶な過去を垣間見る事ができる。
だが、彼は【王国一幸せな国王】として後世に知られている。その理由は、彼の配偶者の【ツェツィーリエ・フォン・ギースベルト】にある。
彼女は、女神の再来と謳われる程の美貌を持ち、だがそれに奢る事のない、謙虚な姿勢と穏やかな性格から、彼女を慕う者は多かったという。
彼女も多くの逸話を残した人物であり、彼女に告白する為に人々が作った行列が、1週間続いたという、真偽の怪しい話まで今世に伝わる程だ。
醜い容姿の国王レオナードと、美しい容姿の正妃ツェツィーリエ。これだけ聞くと、多くの人が政略結婚を想像するだろう。
だが驚くべき事に、彼らは恋愛結婚だったのだ。相思相愛の2人は、しばしば側近を呆れさせる程の熱愛ぶりを披露していたと、側近の1人である【クローヴィア・フォン・レイヤード】の日記に残されている。
その醜い容姿から、最初は民に敬遠されていた国王レオナード。だがその隣にはいつも、幸せそうに微笑む正妃ツェツィーリエの姿があった。
人々は祝福と、女神のような女性に愛されている事への少しの嫉妬を込め【世界一醜く、世界一幸せな王】と国王レオナードの事を呼び、彼の事を受け入れていくのであった。
彼の治世は、今世にまで続く基盤を作ったとも言われ、彼が治めた王国の民の幸福度は高かったと言われている。
【月の王子】と蔑まれていた彼は【黒豚令嬢】と呼ばれる彼女と会い、末永く幸せに暮らしたと、多くの文献に残されている。
その文献の多さは、彼の幸福度の大きさを示しているようで、僕はいつも勇気をもらえる。
「お?お前まーたレオナード王の文献見てるの?」
「うん、僕とよく似た容姿のご先祖さまだから、勝手に親しみ感じてて」
「あぁ?その時代は美醜に厳しかったかも知らないが、今はそんな事ないだろ。少なくとも、レオナード王みたいに暗殺されかけたりしてないだろ、お前は」
「いたっ!」
ピンッと指で鼻を弾かれる。
「ほら、それより次の授業行くぞ、次教室移動だってさ」
「え!それは急がなきゃ!」
僕は慌てて支度をする。きっと今僕が普通に過ごせているのも、レオナード王が彼の時代に今の世の基盤を作ってくれたから。
ありがとうございます。貴方のおかげで、僕は今、幸せです。
「おーい!置いていくぞーー!!」
「待って今行くー!」
バタバタと、僕を待つ友人の元に駆け出した。
お読み下さり、ありがとうございます。
本編はひとまずここで完結とさせていただきますが、その後の2人や第3者から見た2人の様子など、番外編として少しずつあげていければいいなと考えております。
皆様、この小説にお付き合い下さり、ありがとうございました!
誤字報告ありがとうございます。
「暗殺されたり」→「暗殺されかけたり」
に訂正させていただきました。
「相思相愛な」→「相思相愛の」
に訂正させていただきました。
「列が」→「行列が」
に訂正させていただきました。




