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67.神話の真実

「今日は、王家に伝わる神話をお話するわね。」


「はい、王太后陛下」


 正妃教育を始めてからしばらく経ち、王太后陛下との距離も大分縮まった。王太后陛下は、レオンの話をすると、優しい目をして喜んでくれるから、ついつい私も盛大に惚気けてしまう。


 正妃教育で学ぶ事は沢山あるが、王太后陛下の完璧なバックアップもあり、順調に進んでいると思う。そして今日は、最初に王太后陛下が言っていた、神話について学ぶらしい。


「一般的に伝わっている神話は知っているかしら?」


「はい。女神様がこの世界を作り、人々を創造し、今でもこの王国を見守ってくださるというものですよね?」


「そうね。そして女神様の姿はツェツィーリエちゃんのような容姿だと伝わってるわ。」


「そんな、恐れ多いです」


 王太后陛下は、そんな私をクスクスと笑って。


「あら、でも事実よ?」


 そして王太后陛下は、紅茶を一口飲むと神話について話し出した。


「昔この世界は、作物が育たない荒廃した大地だったの。人々は飢えに苦しみ、困窮していたわ。そんな時、何処からともなく銀髪金目の、今の感覚では醜いと呼ばれる男性が現れたの。そう、今のレオナードのような容姿の男性ね」


「今の感覚というのは?」


「それはこれからの話に関係するわ。男性は言ったの。『この大地を草々が生い茂り、実りある大地にしよう』とね。人々は喜んだわ。でも、男性はこう続けたの『ただし、魂のあり方が美しい女を1人差し出せ』と。」


「魂のあり方……」


「そう、でも人々は困惑したわ。魂のあり方なんて傍目から分からないもの。そんな人々は、とある女性を差し出す事にしたの。その当時の感覚で醜いと呼ばれる女性ね。その女性はツェツィーリエちゃん、貴女のような容姿だったのよ」


「え?でも……」


「そう、今の美醜の感覚とは真逆ね。人々は、男性の言うことに半信半疑だったから、その当時醜いことで虐げられていた女性を差し出す事にしたの。彼女なら居なくなっても構わないと言う事でね」


「そんな、酷い……」


「そうね、人は時に残酷だわ。その女性を差し出された男性は、こう言ったの『自分達が要らないと思っている女を差し出すというその根性は気に入らないが、要望通りの魂のあり方が美しい女だ。約束通り、この大地を実りある大地に変えよう』そうして、彼はこの世界を不毛の大地から緑の大地に変えたの。そして2人はこの王国を作ったの。彼らは初代国王と正妃と言われているわ」


「そうなんですね、一般的に伝わる神話とは大分違うのですね」


「ええそうね、それもこれからの話に関係してくるわ。そして人々は、自分達の行いを後悔したの。人々は考えて、彼女を女神として祭ることにしたの。そして、時が流れる内に魂が美しいと言われた、彼女の容姿も美しいとされるようになったのよ」


「そんな神話が……」


 つまり、この世界の美醜も前世と同じだったのに、次第に変わっていったのか。それは知らなかった。


「この神話には続きがあってね。稀に王家には銀髪金目の男の子が産まれるの。今のレオナードの様な子がね。先祖返りと言われているわ。そして、その色味と醜い容姿を持った男の子は国王になる資質を持っているとされているので、長男でなくても国王にしなければならないとされているのよ」


「え?でも、今の国王陛下と正妃陛下はレオン様を暗殺しようと……」


「そうなのよね。正妃にも国王になったあの子にも、この神話の事は話しているのに、あの子達はこの神話等出鱈目だと、そう言って聞かないのよ」


「そんな事が……」


「何処で間違えてしまったのかしらね。」


 私は王太后陛下にかける言葉が見つからなかった。彼女は深い後悔に苛まれているようだったから。


「ツェツィーリエちゃん、この年寄りの昔話を聞いてくれるかしら?」


「はい、私でよければ喜んで」


 そうして、王太后陛下は昔話を始めた。


お読み下さりありがとうございます。

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