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63.卒業

「「「「お疲れ様でした〜」」」」


 エミールさんの衝撃の正体が発覚してからさらに時が経ち、私は13歳になった。


 今は、同じく13歳を迎えたお友達3人と、お祝いをしている。なんのお祝いかと言えば、私を含めた4人が無事に飛び級で初等部を卒業できた事のお祝いだ。

 私とナディア様、レイチェル様はこの先花嫁修業に励むことになるが、トリシャ様だけは中等部に進学し、花嫁修業と並行して学業も修めるようだ。


 余談だが、14歳になる第二王子殿下は、今年も飛び級で卒業できなかったらしい。だが、今の私にはそんな事に構っている暇は無いのだ。



「これでようやく〜、ルード様の奥さんになる為の花嫁修業を正式に始められますわぁ」


「そうね。私もクローヴ様のために頑張らなくては……!」


「私も花嫁修業を始めますが、それよりもリーフ様の言っていた中等部の学問が気になります」


「私は、来週から正妃教育が始まるみたいで今から緊張していますわ」


 そう、私は来週から正妃教育を受けなくてはならない。王族から嫌われに嫌われているレオンだが、王位継承権が生まれた順になっているこの国では、このままいけば第一王子であるレオンが、次の国王になる。それを阻止したい王族とレオンの間では、何やらバチバチとやり合っているらしいのだが『ツェリは気にしなくて大丈夫だ』とレオンに言われたので、問題ないのだろうと知らずにいる。


 それよりも、だ。本来正妃教育を行うべき王妃陛下が私の教育を放棄した為、どうするのかと思っていたら、レオンのお祖母様である王太后陛下が私の正妃教育を請け負ってくれる事になったらしい。

 レオンのお祖母様って生きていたのね……と物知らずな自分を恥じたが、実はレオンもその事実を知ったのは最近の事らしい。何か裏がありそうな匂いがプンプンするが、首を突っ込んではいけないと危険信号がジリジリと鳴っているので、深く突っ込まないことにした。


 ただ、私の正妃教育を請け負ってくれるという事は、少なくともレオンの敵では無いのだろうと思う。つまりだ。レオンの親族との初めてのご対面!すっごく緊張する!国王陛下夫妻と第二王子殿下はレオンの敵なのでノーカウント。


「正妃教育ですか、大変そうですね」


「そうですわね、私達よりも学ぶことが多そうですわ」


「でもぉ、ツェツィーリエ様ならきっと大丈夫ですわぁ!」


「ありがとうございます、不安になっていても仕方ありませんものね、頑張りますわ」


 決意を新たにして、この話は終わりになった。そして、その後は恒例の恋バナとなったのだが、嬉しそうにニコニコと笑いながら話す3人は、それぞれの相手との関係も上手くいっているらしく、幸せそうだ。


 ルードルフとの進展がないことを悩んでいたレイチェル様も、ルードルフがシェルム騎士団長の養子になった事をきっかけに、愛称で呼び合う仲にまで発展したらしい。ナディア様とトリシャ様も、それぞれクローヴィア、リーフェルトと婚約を結んだとの報告を、幸せそうにしてくれた。


「なんだか卒業するのはぁ、嬉しいと同時に少し寂しいですわねぇ」


「そうですわね……」


「仕方の無いことですけどね」


 3人が零す言葉には、楽しかった日常から離れることを惜しむ気持ちが感じられる。私にも分かる。それは前世でも感じた事のある、慣れ親しんだ日常が変わる事への喜び、そして寂しさ。最も、前世とは決定的な違いが今世にはあるけれど。

 それは。


「確かに、今までの日常から離れてしまうのは寂しいことですわね。でも、その日常で築き上げてきた私達の友情が無くなってしまう訳では無いでしょう?私達ならきっと、大丈夫ですわ」


 3人の顔を見ると、感激したような顔をしていて、私は照れ隠しのように言葉を続ける。


「なんて、少しクサかったかしら?」


 そんな私の照れ隠しすらお見通しとばかりに、3人はクスクスと笑って。


「そうですね、きっとこれからも関係は続くでしょうし」


「えぇ〜、辛くなったら泣きつきますわぁ」


「これからずっと会えなくなる訳ではありませんものね」


 私は前世では終ぞ得られなかった【友達】を、今世では3人も得ることができた。それは、私が学園に入学したことによる最大の収穫と言えるだろう。

 今までの日常から離れることは、確かに少し怖い。けれど、私の周りには私を愛してくれている人が大勢いるから。

 その人達に恥じぬよう、誇れるように、私はきっと頑張れる。

お読み下さりありがとうございます。

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