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58.合コン初幹事!

 離宮の応接間に案内されると、実は一緒に来ていたメイドのエミールさんが一礼して退出していった。

 エミールさんもフランチェスカさんもよくできたメイドなので、空気を読むのに長けている。私1人の時には、黙ってそこに居られると私が気まずい思いをする事を知っているので、適度に会話もしてくれるが、レオンやお友達の3人といる時には、決して会話の邪魔をしないようにと、完璧な気配断ちをしている。


 コンコン


 ノックと共にエミールさんの入室を求める声。許可すると、エミールさんと以前可愛い挨拶をしてくれたミリアとリリア、2人の姉妹の姿が。

 給仕ワゴンを押すエミールさんの後ろを、音を立てず静かに歩いてくる。以前と段違いのその姿に、努力の後が窺える。


「美味しいわ……。」


 小さな手で危なげなく、正確な手順で淹れられた紅茶。味も、思わずといった風に呟いたナディア様に完全同意だ。

 ナディア様の言葉を受けて、ミリアとリリアは嬉しさを隠しきれていない顔をしている。2人に尻尾があれば、嬉しさのあまりブンブン振り回していることだろう。その様子に、私たち4人は微笑ましさを感じた。


「ミリア、リリア。美味しい紅茶をありがとう」


「「身に余る光栄にございます、ツェツィーリエ様」」


 私の名前もきちんと言えているが、誇らしげな気持ちを隠せていない顔を見ると、初対面の時のことを思い出して微笑ましい気分になる。


 そんなミリアとリリアが退出してすぐ、レオン達4人はやってきた。


 ドアを開けて入ってきた、4人。ルードルフを先頭に、レオン、リーフェルト、クローヴィアの順に部屋に入ってくる。異性が同じ部屋にいことになる為、部屋のドアは開けっ放しにしている。

 私はレオンの姿を見つけて、思わず駆け寄りそうになる気持ちをグッと抑えて大人しく待つ。そんな私の顔を見て、満面の笑みなるレオン。

 あぁ無理、純粋に顔がいい…。


「髪が…白い……?」


 私の、ポンコツお花畑状態になりつつあった脳内を正気に戻したのは、ナディア様の一言。

 間違いなく、クローヴィアを指して言ったのだろうけど……。うん、ナディア様。それは思ってもスルーするものですよ、増してや王族の側近の1人、そんな事を言ったらどうなることか、まぁでも……。


「ふふっ、私そんなに正直に髪の毛の色突っ込まれたの初めてです、素直で気持ちがいい方ですねぇ」


 やはり、クローヴィアはそんな事を気にするような人物ではなかったみたい。大体、そんな細かな事を気にする人が、大胆に王城に侵入したりする筈がないしね。

 クローヴィアは、面白い玩具を見つけた時のように、輝いた目でナディア様を観察している。いや、そんなにジロジロ見るのはマナー違反じゃない?きっとナディア様も気分を害し……ていなかったー!

 横目で見たナディア様真っ赤じゃん!え、何?怒られなかったからもうクローヴィア好きになっちゃったの?チョロ過ぎない?大丈夫、ナディア様!言っておくけどそいつ、不法侵入者ですよー!!

 言いたい、声を大にして言いたいけど、ここは我慢よツェツィーリエ。


「……まずは自己紹介から始めようか」


 同じく心配そうな目でナディア様を見たレオンがそう提案して、私たちは合コン……顔合わせ?を始めるのだった。


 スタートダッシュを切ったのは、レイチェル様だった。1人がけ用のソファーではあるが、隣同士に座ったルードルフに攻め込む攻め込む。


「ルードルフ様と仰るのですねぇ。私は先程申し上げました通りレイチェルと申しますのぉ、どうぞ名前でお呼びになってぇ?」


「いえ、でもそれはマルティン伯爵令嬢に失礼ではないかと……」


「嫌ですわぁ、そんな他人行儀な呼び方ぁ。どうぞレイチェルと……ねぇ?」


「う、わ、分かりました、レイチェル嬢」


 凄い、レイチェル様。押せ押せの押しまくりだ…。確かにルードルフは好意を全面に示さないと鈍そうだから。それにしても、レイチェル様のお眼鏡に叶ったのか、ルードルフの筋肉は。良かった良かった。


 トリシャ様はというと。


「リュグナー公爵令息は、どんな本をお読みになられるのですか?」


「すみません、ハイネ男爵令嬢。私、リュグナー公爵には養子としてはいりまして、なにぶんまだ呼ばれ慣れていませんので、よろしければリーフェルトとお呼びください」


「分かりました」


「そして、どんな本を読むか…。そうですね、最近読んで印象に残っているのは【空にみる神話の事実】です。太陽が実は女神だったのではないかという作者の考察と、それを裏付けるかのように各地に残る伝承を紐解いていくのは、中々に面白かったです」


「分かります!私は【女神とは希望であり光、つまり太陽なのではないか】という作者の着眼点が面白いと感じました!」


「おや、ハイネ男爵令嬢もこの本をお読みに?素晴らしいですね」


「ありがとうございます。私のこともどうぞトリシャとお呼びください」


 リーフェルトの頭脳もトリシャ様のお眼鏡に叶ったらしい。頭脳というよりは、女性なのに頭が良い事を馬鹿にしないことかも?こちらも本の話で非常に盛り上がっているし、うん、良きかな良きかな。


 さて問題は、クローヴィアとナディア様、この2人。先程からナディア様は顔を赤くして俯いて一言も話さないし、クローヴィアはその様子を見ながら、優雅に紅茶を飲んでいる。いや、面白がってないで助けてあげなさいよ。

 私の心の声が届いたのか、ようやくクローヴィアが口を開いた。


「ニクラス侯爵令嬢、どうして黙ったままなのですか?先程は声をかけてくださったのに……」


 あ、声届いてなかった。更にいじめるモード入ってるわ、クローヴィアのやつ。内心やきもきしていると、私の髪に触れる手が。


「ツェリ、3人が心配なのは分かるが、他所を向いてばかりだと私が寂しいぞ?」


「分かりましたわ、レオン。今からレオンしか目に入れません」


 んんんー、可愛い!こんな可愛くオネダリをされて、断れる者がいるであろうか、いやいるまい!レオンがボソボソと『いや、そこまでは言ってない……』とか言ってるが無視だ無視!


 そして、宣言通りレオンを構い倒すこと1時間。ハッと気がついて周りを見ると、3組ともなんかいい感じの雰囲気を醸し出していた。

 ふぅ…良かった。自分のこと最優先で周り放って置くとか(自称)幹事失格だわ。まぁ前世では合コンとか行ったことないから、幹事がどんなものかは完全なるイメージなんだけど。


 そのままその日はお開きになり、私は後日3人に感謝されることになるのだった。

お読み下さりありがとうございます。

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