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19.告白。

 レオナード殿下の婚約者の座を射止めようと決意した私とお義父さまは、善は急げとばかりに早急に手紙を出し、登城することにした。


 見慣れた豪奢な扉をノックし、入室許可が出たので部屋に入る。


 いつものように挨拶をし、フカフカなソファーに座る。喉が干からびるような感覚を感じて、ティーカップを持ち上げると、その手は細かく震えていて、私は自分が緊張しているのだと自覚した。

 1度大きく息を吐き、気分を落ち着かせる。


「レオナード殿下」


「なんだ」


「婚約者をお探しだと、お義父さまからお聞きしました」


 衝立越しに、大きく息を飲む気配が感じられた。


「私、レオナード殿下とお話することが好きです。豊富な知識をお持ちで、でも頭でっかちにならない、柔軟で公正な視点をお持ちなレオナード殿下と話していると、私は新しい気づきを沢山得られましたわ」


 殿下は、私が何を言いたいのかが分からないのか、戸惑っている様子だ。でも、分からないからと言って、口を挟んで私の言葉を遮らずに、黙って聞いてくれているのを感じて、あぁ、好きだなぁ、と思う。


「そんなレオナード殿下なのに、他人どころか、ご自身の気持ちにもちっとも気が付かなくて。私は、自身が寂しかったことに初めて気が付いて、心細そうにしているレオナード殿下を抱き締めて、大丈夫だと、そう言って差し上げたくなりました」


「え……」


「レオナード殿下には、ハッキリ言わないと伝わらないと思いますので、言いますわね」


 すぅ、と大きく息を吸い。


「私は、レオナード殿下をお慕い申し上げております。私のこの気持ちがお嫌でないのなら、どうか婚約者にしてはいただけませんか?」


 私がそう言い切った瞬間、ドシン!と何か重いものが落ちるような音がした。


「レオナード殿下!?」


「だだだ、大丈夫だ!」


 思わず声を上げると、いつもより上擦った殿下の声が返ってくる。

 少しの間、気まずい沈黙が訪れる。


「ツェツィーリエ嬢」


「はい」


「貴女は、私の姿を見たことが無いだろう。それなのに、そんな事を言ってしまって後悔はしないか?」


「それを言うなら、レオナード殿下も私の姿はお知りではないでしょう?」


「私は姿など見なくても、ツェツィーリエ嬢を好ましく得がたい女性だと思っている!」


「まぁ、嬉しい」


 思わず、と言った風に出た殿下の言葉に、心が歓喜で震える。殿下は恥ずかしかったのか、数回咳払いをすると。


「私は、ツェツィーリエ嬢と婚約することに否はない。むしろ、その、好ましいと思っているのでこちらからお願いしたいくらいだ。だが、ツェツィーリエ嬢は違うだろう」


「私とレオナード殿下の何が違うと言うのですか。そんなにご不安なら、先に婚約の書類を書き上げてしまいましょうか?レオナード殿下がそれで安心できるのならば、私はそれでも一向に構いません」


「本当に後悔しないのか?」


「えぇ。私はレオナード殿下、貴方様の心の有り様をお慕いしているのです。外見がどうであろうと気にしませんわ」


「そうか」


「ええ」


 私たち2人の間に、再び沈黙が横たわり。

 殿下が決意を込めた声で言う。



「ツェツィーリエ嬢、衝立を越えてもいいか?」

お読み下さりありがとうございます。

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