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13.はじめまして。

 私がそう言ってからのお義父さまの行動は早かった。あれよあれよという間に着替えさせられ、今は王城に向かう馬車の中だ。

 いくらなんでも行動が早すぎる、心の準備をさせてくれ。私はジト……とした目でお義父さまを見る。


「すまない、ツェツィ。だが、第一王子殿下は素晴らしいお方なんだ。俺も早く元気になって欲しくてな……」


 少しバツの悪そうな顔でお義父さまが言うので、許すことにする。

 誰にでも優しいようでいて、自分にも他人にも厳しい評価を下すお義父さまが、そこまで言う第一王子殿下は優秀なのだろうし、私が元気になる手助けができるなら、それも嬉しい。


「でも、私とお話するくらいで元気になっていただけるでしょうか…?」


「そこはツェツィの腕の見せ所だな」


 不安になって零すと、お義父さまが意地悪そうに笑う。無条件に大丈夫だと私を甘やかさないところには好感が持てる。


 そうこうしているうちに、馬車が王城に着いたらしい。私は、上に上げていた真っ黒なベールを顔の前に下ろすと、お義父さまのエスコートで馬車を降りる。


 このベールは、私の美貌を少しでも隠すために作られたベールで、このベールのせいなのか、私は『黒豚令嬢』と呼ばれているらしい。


 お義父さまは『ベールくらいじゃツェツィの美しさは隠しきれないからな。』と苦笑した。

 私はというと、『白豚から黒豚か…ちょっと美味しそうになったな。』と思ったくらいで、傷付きもしなかった。


 あの日、お義父さまにお養母さまと会わせてもらえてなかったら、こんなに冷静ではいられなかったと思う。

 余談だが、クラウディア様のことをお養母様と初めて呼んだ日、お義父さまは少し泣いた。

『クラウディアも、ツェツィみたいな良い子の母親になれて、凄く喜んでるだろう。』そう言いながら。


 賑やかな王城の中心部から離れること少し。静けさに包まれた離宮に到着した。第一王子殿下の誕生に合わせて造られたこの離宮に、彼は1人で暮らしているという。

 第二王子殿下は、国王夫妻の下で暮らしているというのに、隔離されるかのように離れて暮らす第一王子殿下に、少し胸が痛む。


 離宮のとある一室、豪奢な扉の前に立つと、お義父さまは軽くノックをする。


「フィリップス・フォン・シュタインにございます。娘のツェツィーリエを紹介したく、参りました」


「入れ」


 綺麗なソプラノボイスがそれに応える。お義父さまと私は入室する。


「レオナード殿下……」


 お義父さまが少し呆れた声を出す。無理もないと思う。

 ソプラノボイスの持ち主であろう、第一王子殿下ことレオナード殿下は、衝立の向こう側なのだから。


「すまない。だが、そちらにいるのはご令嬢だろう?私を見て、気分を害されたりはしないだろうかと不安になってな……」


「ツェツィーリエはそんなことをしないと申し上げたでしょう」


「す、すまない……」


 謝罪をするレオナード殿下は、しかしそれでも衝立の向こう側から出てこない。

 気持ちはよく分かる、前世の私もそうだったから。容姿をバカにされて、悲しくて、努力しても変えきれずに、やっぱりバカにされて。容姿がダメなら他のことを頑張ろうとしても、容姿を理由に認めてもらえなくて、段々と自信を無くしていった前世の私。

 レオナード殿下が何故か前世の私に重なって見えた。


「レオナード殿下、お初にお目にかかります。ツェツィーリエ・フォン・シュタインと申します」


 向こうからは見えないだろうカーテシーをしながら、私はこう続けた。


「衝立越しで構いません、どうか私とお話をして下さいませんか?」

お読み下さりありがとうございます。

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