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1.産まれたてですが、既に瀕死です。

美醜逆転ものという、己の性癖をこれでもか!と詰め込んだ小説です。

 く、苦しい!!


 心地よい夢の中で、幸せに包まれていたはずなのに、先程から段々と苦しくなってきた。前に過呼吸を起こした時の感覚に似ている。

 なら対処法は分かってる。ゆっくりと意識して息を吐くのだ……って待って!私息してない!なんで!?

 呼吸ができないという事実にパニックになるが、私の本能がここから出れば大丈夫と訴えてくる。


 正直、この優しい空間から出るのは嫌で仕方なかったが、背に腹はかえられない。意を決して、ここから出ようと試みる。

 すると、すぐになんだか全身をもみくちゃにされてさらにパニックになるが、もみくちゃにされるのはここから出ることを応援されてるのだと、私の本能がまた訴えかけてくるので、暴れたりはしなかった。


 あれからどれくらいたったんだろう、あと少しで出られると分かっているのに、私はまだこの狭い場所から出られていなかった。

 息が苦しくて苦しくて、ボーっとした頭で、もうダメかも知れない…と諦めかけた時だった。


 ………!!………!!


 何か声が聞こえた。私の耳には不明瞭なその声は、きっと私がここで諦めたら悲しみに染まる。そう思うと、なんとしてでもここから出なくては!と強い思いが宿るのが分かった。

 ボーっとした頭で考えて考えて、火事場の馬鹿力!とばかりに、その場でグルグルと回転しながら出口に向かう。とても狭いところを進んでる気がするので、少しでも抵抗を少なくしようとして回転したのだが、中々いい案だったらしい。

 私をもみくちゃにする何かも、あと少し、頑張れ!と応援してくれてるかのように感じる。

 そして、優しい空間からのお別れを果たすと、私は思いっきり息を吸い込んだ。


 おぎゃあ!おぎゃあ!


 そして、何故か大音量で鳴り響いてくる赤ちゃんの泣き声。


 ……え、ひょっとして、私、今……産まれた?





 産着にくるまれた可愛い我が子を見て、ヴィダは思わず涙ぐむ。そんな私を見てクリスティーナは笑う。


「まぁあなた、また泣いてるの?」


 出産まで2日近くもの長い時間を要したからか、疲れが見えるその顔は、それでも母になった喜びからか、神々しささえ感じる。


「だって、僕が父親になれる日がくるなんて、思ってもみなかったから……」


「妊娠がわかった時から、貴方はそればっかりね」


 でも、とクリスティーナは続けて。


「こんなに綺麗な子が私の子だなんて、信じられない気持ちはよく分かるわ」


 そして、ふぅ……と2人揃って溜息をつき。


「それにしても、少し美しすぎるよね」


「えぇ、こんなに綺麗な赤ちゃんは見たことがないわ」


 それは決して親バカだからという理由だけではなく、すやすやと眠る赤ん坊はこの世の美を集結したといっても過言ではない姿をしていた。


 そんな両親の溜息など知らず、戦いに打ち勝ったかのような達成感を胸に抱え、赤ん坊はスヤスヤと眠るのだった。

お読み下さりありがとうございます。

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