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「…おはよう」
富田がぼさぼさの寝癖をつけながら眠気眼をこすり自室から出てきた。
「おっすー。遅起きやねー。もう1時過ぎとるよ」
対して林原はバッチリ起きてる。
「嘘だろ! ってまだ10時やんかービビったわ」
「いやー用事ないのにトミタが昼前に起きたから意地悪してみた」
「そっかー。まぁ、確かに珍しいか」
と適当な冗談を適当な返事で返す富田。
「ハヤシー朝食べた?」
冷蔵庫から牛乳を取り出しコーンフレークに注ぐ富田。
「もちー」
ファッション雑誌を読みながらリビングでゴロゴロしてる林原。
「そっかー。俺コーヒー淹れるからお湯沸かすけどなんか飲む?」
「うーん。コーラ」
「…おっけー」
お湯沸かすついでの飲み物ではないのか。
「ほーい。どーぞ」
「あざすー。トミタさー。今日昼からも空いてるよねー?」
「うん。なんかする?」
「最近はやりのあれやろうよ」
「あれ?」
「そう、あれよ」
「…ヒント」
「180cm」
どういうヒント。
「あっわかった。fall guysでしょ」
「ピンポーン! 正解」
それだけでわかるのか…。
「流行ってるもんなーあれ。ハヤシーは買ってるん?」
「まだなんよー」
「じゃあお湯沸かしてる間にインストールしておこうかな」
「え? 朝ごはん食べたらすぐやる?」
「うん。今日はゲームデーということで」
「よっしゃあ!」
とぴょんと立ち上がる林原。
「やろかー」
ノートパソコンを2つリビングの机に並べて座る二人。
「あ起動した。うわー可愛いねこいつら。ヘイホーみたい」
他のゲームで例えるな。
「でもこいつら180㎝あるんだぜ」
「そういえばトミタ身長なんぼだっけ?」
「えーと182かな」
「5㎝ぐらいよこせ」
「無理」
「これどうやって招待するん?」
「えーとsteamも起動しなあかんっぽい」
「そうなんや、ちょっとめんどいね」
「招待したよ。やろけ」
「ぽちっ」
マッチング画面に映る可愛い180㎝のヘイホーが真っ逆さまに投身自殺するさまを見てツボる二人。
「始まったでトミタどこおる?」
「えーと右端の方やで。ハヤシーは、そこか」
「わかるん?」
「矢印出てるで」
「ほんまや」
「おおお! 引っ張られてるやめろ」
「あーそういう足の引っ張り合いもできるんだ」
「そういうことなら、おらハヤシー待て」
「やめろ~掴んじゃない! 仲間やろ!」
「お先にゴール」
「あ、ぶない。うちもゴールできた」
「よしよし。良くやった」
「トミタが引っ張らんかったらギリギリちゃうかったけどな」
「ぴゅ~」
「あんた口笛ほんまに下手」
その後二人は順調に勝ち進んでいきファイナルステージへ。
「一回目にしては上手ない? うちら」
「確かにプロゲーマー目指せるレベル」
「それは無理」
「最後は棒がぐるぐる回るやつか」
「これ得意な気がする」
「まじ? 俺苦手かも」
「あっぶない!」
コントローラーを握りしめながら富田の方へ体を揺らす林原。
「おい体まで揺らすな! wiiじゃないぞこれ!」
「…ちぃーちっちっちぃ! トミタこれはバトルロワイアルなんよ。つまり勝者は一人のみ。勝つのはあたしや!」
「一人称は統一しな」
「…昨日お姉ちゃんと遊んだからうつったんよ」
「ほれ落ちろ林田!」
「くぉお! どさくさに紛れて掴まんとって!」
「あ」
「あ」
加速した棒が二人のアバターを吹き飛ばした。
その後、二人とも笑いながらマッチングを始めたのは語るまでもないことだった。