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お伽話「メビウスの輪」

作者: 小雪

「優しさ」とは、なんなのでしょうか?

「苦しみ」とは、なんだったのでしょうか。


未だ、その答えを知るものは、誰もいないのかもしれません。


 昔々ある所に、心優しい少年がいました。

少年のいる場所は、常に争いの絶えない国でした。

人々は貧しく、その日食べるパンすらままなりません。

心優しい少年は、胸をいためて決意をします。

「私は、この国から争いを無くす。」

人々を救いたい一心で、少年は剣を取りました。

心優しい少年は、長い年月を重ねながら、数々の勝利を収めていきました。


 そしてついに、悲願を達しました。

この国の戦いに、幕を下ろす事ができたのです。

多くの人々が、彼に感謝しました。

彼も苦しむ人達を救えて、心から喜び安堵しました。


 しかし争いが終わり、彼がふと振り返った時、そこには、数知れない血と涙に溢れていました。

心優しい少年は、多くの物を犠牲にした罪の意識に苦しみ、途方の無い気持ちになりました。

そして彼は、国王に懇願して言います。

「私は多くを成したが、多くを奪いすぎた」

「どうか私に、罪を贖う時間を与えて下さい」

「この戦いの責任を、背負わせて欲しい」

心優しい彼の願いは国王に聞き届けられ、彼には流刑の地で罪を贖う為の、充分な時間を与えられました。

もはや国王にとって、民衆の信頼と信仰を厚く受ける彼の存在は、邪魔になる物となっていたので、彼の申し出は願ってもない物でした。

「ああ、みんなを平和に導けてよかった…」

戦争で流れた血と、奪われた魂に何度も謝罪をしながら、彼はやっと、心から安堵しました。


 彼が国を去った後、国民の誰かが声を上げました。

「目障りになった英雄を、国王が不当に罰した!」

「彼のおかげで戦争が終わったと言うのに!」

「この国の王は権力に取り憑かれた化け物だ!」

「皆、彼の様に勇気を持って立ち上がれ!」

「剣を抜け!!!」

一つ上がった声に、賛同する言葉は次第に大きくなり、国王の弁明する声は最早、国民の耳には届きませんでした。


 そうして再び、この国に戦火が巻き上がりました。

国民の反乱を受け、国王は失墜。

急に空いた次の座を巡る争いは混乱を極めます。

更に先の戦争で敗戦した国が、その恨みを晴らす為に剣を取り向かってきたのです。

僅かな平和も虚しく、心優しい少年の愛した国は、いとも簡単に戦争に飲まれてしまったのです。


争いを無くす為に戦った心優しい青年は、愕然としました。

平和を望んだ彼自身が、戦争の火種となってしまったからです。そしてその後、争いを食い止めようと国に戻った彼もまた、憎しみに剣をとった敵によって倒されてしまいます。

平和を得た国は、再び、長い長い戦争の中へ。

心優しい少年の掴んだ束の間の平和も忘れ去られて行きました。


 彼は、人々の望む平和の為に立ち上がった、本当に心の優しい少年でした。

彼が民衆を踊らせたのか、民衆が彼を踊らせたか。

今ではもう、答えを知るものは誰もいません。


 その国では今も、止むこと無く争いの炎が巻き起こっていると言います。


ある時は欲望を振りかざし

ある時は憎しみを振るいあげ

またある時は、争いを根絶する為に。


end


己の尾を食い合うメビウスの輪。


ふと思いついたので、箇条書きの様に淡々と書いてしまいました。

テスト投稿を兼ねて。

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