表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第4章 ガルディア王国前編
95/295

94 旅人の小屋

 追い剥ぎ街道の至るところに存在する「旅人の小屋」は、一般的な街の宿とは違い、寝具や料理の提供はない。その一方で雑魚寝だが宿泊ができ、水源も確保されているので、飲料水の補充や洗濯等ができた。また、管理人も常駐しており、自然と旅人たちが集まるので、情報交換することのできる有益な場所にもなっている。


 しかし、宿泊施設としては狭く、小屋内では盗難や痴漢などの各種犯罪が横行していることから、そのすぐそばで野宿する者の方が多かった。小屋周辺には人が集まるので、安全に野宿できるためだ。


「なんだかいつもより人が多いわね」


 夕方前に旅人の小屋についたとき、デリシーが周囲を見渡して違和感に気づいた。初老の管理人がマリアたちを上から下までしげしげと眺めて、ルーファスに尋ねる。


「3人で来たのか?」


 ルーファスが頷くと、管理人は心配そうにマリアとデリシーを見た。


「この先の道は野盗がかなりの確率で出る。最近は特に多い。そんな少人数……しかもきれいなお姉ちゃんと坊やなんかを連れていたら、確実に狙われるよ。ここで誰か他にも同行者を見つけた方がいい」

「それはわかってはいるが…」

「一昨日、この先の道で商人の一行がやられた。もちろん護衛は何人かつけていたようだが、たった1人を除いて無惨に殺され、すべての金品は奪われてしまったらしい。私も埋葬の手伝いに行ったんだが、あれはひどかったよ……。悪いことは言わないから引き返すか、どうしても通るのなら人数を増やしてから行った方がいい」


 マリアとデリシーは不安に顔を見合せたが、ルーファスはわずかに眉を寄せただけだった。いつもより人が多かったのは、行く道を躊躇う者たちが、旅人の小屋に溜まっていたからであろう。


「一応さがしてはみるが、こんな俺たちと組む物好きはいないだろう」


 果たしてルーファスの予想は当たっていた。ルーファスとデリシーが管理人の勧めに従って、何人かに声をかけたが、もれなくすべて断られてしまった。マリアたちと組んでも彼らに何のメリットもなく、むしろ狙われて危険が増すだけだからだろう。


「俺たちだけで行こう。たとえ野盗が出たしても、俺が何とかするから、そんなに心配しなくてもいい」


 不安そうにしているマリアの頭を撫でながら、ルーファスが優しく言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ