83 新しいおもちゃ
R15です。マリアがまたデリシーにからかわれているので、かわいそうに思う方は読まない方が良いです(>_<) なんで信じちゃうの?! というレベルですが……。
活気溢れる街アーデルハイムは、西方からガルディア王国の王都シュバルツに行くための主要な中継地点の1つである。
なお、アーデルハイムから深い森を抜け、ガルディア王国の中央に位置するタンガロイ湖沿いの道を南になぞると、王都シュバルツにつく。
マリアたちが到着した日、アーデルハイムでは折しも月1回の定期市が開かれているところだった。今後、森を抜ける際には野宿もするので、その準備のために定期市は後から見に行くことにして、まずは宿に入る。
ちなみに3人で旅をしている間は、マリアはデリシーと相部屋をすることになっている。
そのことをデリシーから聞いたとき、マリアは恋人同士の2人に申し訳なく思い、自分の恋心を押し殺して彼女に尋ねた。
「デリシーさんはルーファスと同じ部屋じゃなくてもいいんですか? 私は1人でも大丈夫ですから、遠慮しないでください……」
思い詰めた表情で提案するマリアに、デリシーは妖艶に微笑んだ。
「あら、いいの? それならお言葉に甘えて、そうさせてもらおうかしら。ルーファスったら、夜はとても情熱的なのよ? でも私たちはもっと深く愛し合いたいのに、時間が全然足りなくて……。マリアちゃんから申し出てもらえると、本当にありがたいわ」
「……!」
デリシーがあの朝帰りの日のことを言っているとわかったマリアは、大人の関係を見せつけられ、情けないほど動揺した。
「……結婚前なのに……良いんですか……?」
「好きな男女が一緒にいれば、自然とそうなってしまうものなのよ。そのうちマリアちゃんにもわかるわ」
もちろんデリシーとルーファスの間に恋愛関係は存在しないので、デリシーは完全にマリアをからかって遊んでいるだけだった。
「……ふふふふふ……!」
「デリシーさん?」
肩を震わせているデリシーを見て、すっかり涙目になっていたマリアは困惑する。
「……あなたって本当に素直なのね。悪い大人の言うことを簡単に信じてはダメよ?」
そう言ってデリシーはマリアに頬擦りをした。新しいおもちゃのマリアはかわいくて、頗る反応が良い。デリシーはすっかりマリアのことが気に入っていた。
「私はかわいいかわいいあなたと、同じ部屋がいいの。よろしくね」
部屋から出てきたマリアは暗い顔をしていて、デリシーは満面の笑みを浮かべていた。対照的な2人の様子にルーファスが首を傾げる。
「……マリアはまたデリシーにからかわれたのか? この女の言うことは真に受けるなよ」
マリアは切なそうにルーファスをちらりと見て、そして何も言えずに目をそらすのだった。




