81 美少年
R15ですが、そういうシーンはありません。若干BL的な要素もあります。
翌日、マリアは背中の中央辺りまであった長く美しい髪を、デリシーに肩につくくらいまで切ってもらった。さらに用意してもらった一般的な少年の服に袖を通す。女性らしい膨らみを隠すために、服の下にかなり固いきつめのベストとガードルを着用した。
マリアは初めてルーファスとトムの前に少年の姿で立ったとき、恥ずかしくて仕方なかった。少年の格好になったマリアを見て、2人ともなんだか驚いたような顔をしていたので不安になってしまう。
マリアが後込みしていると、デリシーは自信満々でマリアを2人の前に強引に押し出した。
「ほら、マリアちゃん、自信持ちなさいよ」
デリシーは聖母のような慈愛の微笑みを浮かべ、マリアの背中をさわさわと撫でた。マリアはなんだか寒気がする。
「美少年……堪らないわぁ……。本当にマリアちゃんが男の子だったら、お姉さんが手取り足取り色々と教えてあげるのに」
デリシーはマリアを恍惚の表情で抱き締めて、執拗に頬擦りをした。マリアはデリシーから漂う甘い薫りにむせそうになり、官能的な胸の谷間に埋もれて息もできない。それにデリシーは力が強すぎて、マリアの華奢な身体は折れてしまいそうだった。
「どうですか……? 男の子に見えますか……?」
マリアは色んな意味で涙目になりながら、ルーファスたちに尋ねた。
最初に口を開いたのはルーファスだった。
「少年に見えるのは見えるが、なんか別の意味で危なくなったな……」
トムも何度も頷く。
「ああ、そっち系の男に掘られるかもな……美少年すぎてヤバイ……。俺でも目覚めそうだ……」
2人の会話の意味がわからないマリアは小首を傾げた。
「掘られる? ……って、なにを掘るんですか?」
マリアの素朴な疑問に、ルーファスは首をふった。
「お前は知らなくて良い。それよりも、髪を切ったからって油断するなよ。常に俺かデリシーのそばから離れるな」
ルーファスはマリアに近づき、彼女の短くなった髪をすいた。短くなった金糸の髪はルーファスの指からすぐにすり抜けていく。彼はマリアの長い髪を自分の指に絡ませるのが好きだったし、何よりも自分が不甲斐ないせいでマリアに髪を切る決断をさせたことが悔しかった。
「なんだかもったいなかったな」
「また、伸びるから本当に気にしなくて良いのに」
ルーファスの残念そうな態度を見たマリアはふと不安になる。
「ルーファスは私の性別を忘れないでね?」
恋人になれなくてもいいから、せめて女性として扱ってほしかった。
「当たり前だろう。髪の長さなんて関係ない。マリアは誰よりも……本当にきれいだよ」
マリアの価値は髪の長さだけでは決まらない。彼女は容姿も性格も何もかも美しいのだ。すっかり2人だけの世界をつくりあげていたマリアとルーファスに、デリシーは呆れたように言った。
「そういうのはベッドの上でやりなさいよ」
デリシーの言葉にマリアは頬を染め、ルーファスはデリシーを軽く睨んだ。




