74 会わせたい女
保険でR15です。そういうシーンはありませんが、暗示されているのがそういうことなので(曖昧すぎてすみません……)。
ルーファスはマリアに大人のキスを教えてくれたが、それは彼に特別な関係の女性が存在したということだった。そして彼が今現在も、その女性と関係をもっていたとしても何らおかしくはなかった。
マリアはその女性こそが「デリシー」に違いないと確信する。
(ルーファスに恋人がいたなんて……)
マリアは自分の恋があっけなく終わってしまった悲しみにうちひしがれていた。
それと同時に、恋人のいる男性になんて恥知らずなお願いをしてしまったのだろうと、深く後悔する。
マリアはルーファスから大切に守られているという自覚はあったが、そもそも彼は「お世話になったお屋敷のお嬢様をお助けしただけ」だったのではないだろうか。
マリアは夫婦として旅をしてきたせいか、そのことをすっかり忘れてしまっていた。彼女はそんな自分を心底情けなく思う。
悲しみの淵に沈むマリアとは関係なく、ルーファスが夕方に帰って来た。
「マリアに会わせたい女がいる。食堂まで来てほしい」
そうルーファスに告げられたとき、マリアの心臓はこれ以上ないくらいに早鐘を打った。彼女は性格的に断ることもできず、彼に言われるがままに食堂まで足を運ぶ。
そこではルーファスと同じ黒髪で紺碧の瞳をした妖艶な女性が、マリアを待ち構えていた。




