表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第3章 アストリア王国編
67/295

66 冷たくて熱い言葉

 マリアたちの馬車は、監禁されていた屋敷から少し離れた木立の中に隠してあった。馬車の側にいたブラックが心配そうに、マリアの脚にすがりついてくる。


「ブラックがあなたに、私の居場所を教えてくれたの?」


 ルーファスは一応頷いてくれたが、どうやらものすごく怒っているようだった。表情にはそこまで出さないが醸し出すオーラで、さすがのマリアにもわかってしまう。


「助けてくれて、ありがとう。それに……ごめんなさい。あなたにあんなに油断しないように言われていたのに」


 マリアがお礼と謝罪を口すると、ルーファスは無言でそばにあった大きな木に彼女を追い詰めた。彼女の背中に、固くてごつごつとした木の感触が当たる。

 ルーファスは、マリアの顔の横に両手をついて、彼女の身動きを封じた。マリアは彼に至近距離で見下ろされる。


「お前から目を離した俺も悪いが、訳のわからないことを吹き込まれて、まんまと騙されて……。自分がどれだけ危険な状況だったかわかっているのか?」


 ルーファスが来なければ、マリアはそのまま侯爵に処女を散らされていただろう。それは彼女にもよくわかっているが、それでもマリアには抵抗できない理由があった。


「だって私は自分のことより、あなたが大事なんだもの。私と侯爵様が本当に婚約していたとしたら、あなたは貴族の婚約者を奪ったことになるわ。もし大切なあなたが罪に問われるようなことになったら……私は……」


 そこまで言って、マリアは涙ぐんで俯いた。


 マリアだって嫌だったし、怖かったのだ。ただ大切なルーファスを守りたかっただけで。しかし返ってきた言葉は冷たくて、それなのに熱かった。


「俺は自分の身くらい自分で守れる。マリアに心配される必要はない。……俺のことを思うなら、絶対にほかの男のものになるな。それだけでいいから……」


 ルーファスはマリアに、今の自分の顔を見られたくなくて、彼女の肩口に顔を(うず)めた。そしてそのまま告げる。


「クルーガー侯爵の話は嘘だ。マレーリー様は婚約なんて了解していない」

「ずいぶん確信があるのね……?」

「マレーリー様は自分の恋のためにも、侯爵とマリアの結婚を許すことは()()()ない。だから、今後あんな嘘に騙されるなよ」


 ルーファスはマレーリーの恋の相手を知っているのだろうかと、マリアは不思議に思いながらも頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ