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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第3章 アストリア王国編
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64 確かめる方法

R15


 クルーガー侯爵は、ベッドに横たえたマリアの足の間に身体を割り込ませた。


「な、何を……?」

「何って、確かめるんだよ。ルーファスと何もなかったなら、私を受け入れられるよね?」


 怯えながらも彼の目の前に大人しく横たわるマリアを見て、侯爵は心の中でほくそ笑んでいた。彼女はまだ確かめる方法を理解していないようだった。


(本当に可愛いな、簡単にだまされちゃって……)


 マリアと婚約していたなんて、もちろん大嘘だ。マレーリーは金に困っていて、爵位も屋敷も何もかも投げ捨てた愚か者だがマリアだけは売らなかった。


 マレーリーは常識でははかれないところがあるから、マリアも侯爵の言うことをあっさりと信じてしまったのだろう。それに彼女の気を失わせるために使った東方の秘薬の影響もある。

 秘薬を使ったのは、彼女をさらうときに少しでも騒がれるとルーファスに気がつかれてしまう恐れがあったためだったが、あの薬は気を失わせるだけでなく、正常な思考力をも奪うことができた。僅かだが催淫効果もあるらしい。


 侯爵が、無防備なマリアの太腿を撫で上げると、彼女の白い肌が(あらわ)になっていく。ところどころにつけられた赤い痕が目に入り、苦々しい思いがした。彼女は自分からその身を晒したのだろうか。そう思うと尚更意地悪したくなってくる。


 マリアがまだ男を知らないことは、無抵抗な今の様子から見ても、確かめるまでもなく明らかなことだった。侯爵はいたいけな獲物を前に、抑えきれない欲望が膨れ上がるのを感じる。

 しかし、とりあえずマリアの純潔を奪うことが目的だから、ゆっくりと堪能するのは自分のものにした後でいい。彼女は初めての相手と間違いなく結婚するだろう。


「今日はゆっくり愛してあげられないけど、次からは優しくしてあげるから」


 シーツに散らばる金糸の髪、怯えて潤んだ空色の瞳、しっとりとした真珠のような肌。彼は女神のように美しい彼女を見下ろした。

 逃げることなく結婚していれば、初めてのときは時間をかけて優しくしてあげたのに……。これも自分から逃げた出したマリアに与えられた罰だと、彼は思った。


「確かめるって、まさか、侯爵様……」


 ようやく確かめる方法を悟ったマリアの顔から、血の気が失せた。


「まだ結婚もしていないのに、そんな……」

「確認する方法はそれしかないんだ。終わってから、シーツに純潔の証がついてたら、彼と何もなかったことを認めてあげるよ」


 マリアにとっては、結婚前に身体をつなげることはあり得ないことだった。(かたく)なに首を横にふるマリアに、侯爵はとどめをさす。


「大切なルーファスを罪に堕としていいの? 確認させてもらえないなら、不貞を訴えざるを得ないけど、私はそれでも構わないよ?」


 彼がわざと余裕めかして答えると、逆にマリアはますます追い詰められたようだ。抵抗する気力を失ったマリアの、まだ誰も触れさせたことのない場所に、侯爵の手がかかろうとしていた。


(あぁ、ルーファスと結ばれたかった……。彼となら何も怖くないのに……)


 マリアはこの絶望的な状況になり、自分の気持ちにようやく気がついた。もはや叶うことのない想いに蓋をするように目を閉じると、涙が一筋こぼれ落ちた。

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