63 あの夜のなごり
R15 ちょっと変態っぽいかも……。
マリアは涙目で侯爵に懇願した。逃げ出してしまった自分を許してもらえるとは思えなかったけれど、ルーファスだけは守りたかった。
「逃げたりして、ごめんなさい……。ルーファスとは何もないの。だから彼だけは……」
侯爵は意味ありげに笑う。
「嘘をついて、マリアは本当に悪い子だね。じゃあ、確かめてみてもいい? 君が本当に彼と何もなかったかを」
マリアは嘘をついていたことをもっと詰られるかと覚悟していたが、侯爵は意外にもあっさりとしていた。
「怒らないの……? それに確かめるってどうやって……」
「わからないんだね、可愛いマリア」
そうして侯爵は、カヌレでルーファスに見えてしまう位置につけられた、口づけの痕を妖しくなぞる。
「これでも私はすごく怒っているんだよ。何もなかったことが確認できたら、そのときに初めて君たち……いや、ルーファスを許してあげるよ」
侯爵はマリアを抱きかかえて、ベッドに優しく運んでやる。そして彼もそのままベッドに上がった。微かに歪む敷布の感触が、彼女の胸をざわつかせる。
「服を着替えさせた侍女が言っていた。太腿とか、かなり際どい場所にまで、淫らな痕が幾つも残っていたと」
マリアはカヌレでの夜を思い出し、羞恥で頬を赤く染めた。
「でも、何もなかったの……。侯爵様、どうか信じてください……」
必死に許しを乞う無垢なマリアを見て、侯爵は艶然と微笑む。
「言葉なんていくらでも言える。残念ながら、何もなかったなんてとても信じられない。だから……マリアの身体に直接確かめさせてもらうよ?」




