表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第3章 アストリア王国編
60/295

59 いつも通りの朝

 夜が明け、いよいよアストリア王国に別れを告げる日がやって来た。検問所が開くと同時に、国境を越える計画をしている。

 その日はいつもと変わらぬ朝で、ルーファスが馬車や荷物の準備をして、マリアはブラックにエサをやっていた。


「あなたにも首輪を買ってやらないといけないわね」


 元気よく口一杯に頬張るブラックを眺めながら、マリアは優しく話しかけた。

 ブラックにはマリアの淡い花柄のスカーフを折って巻いているが、時折ほどけてしまうので、首輪を買ってやりたいと思っている。


「ガルディア王国についたら買おうね」

「アォン!」


 黒い毛並みに映えるのは何色だろうか、彼女がのんびりとそんなことを考えていたときだった。

 地面を踏む(かす)かな音とともに、背後に人の気配を感じた。


 マリアはルーファスが呼びに来てくれたのだと思い、スカートの裾を払いながら、ゆっくりと立ち上がる。しかし振りかえると同時に、視界が背の高い何かで覆われた。


 すぐにマリアは温かい布の感触を得て、()()に抱きしめられていることを悟った。離れ離れの恋人たちの逢瀬のように、情熱的に固い胸板を押し付けられる。


(ルーファスじゃない……?!)


 明らかに男性であるその誰かからは、重く甘い、官能的な花のような薫りがした。

 マリアが懸命に身を(よじ)り、腕の中から逃れようとしたとき、男と視線が交わる。


「あなたは……!」


 驚きに開いた口元に何か布を当てられて、すぐにマリアの言葉が意識とともに儚く途切れた。そのまま男に抱きかかえられ、どこかに連れていかれてしまう。

 薄らいでいく意識の中、ブラックの鳴き声がどこか遠くで響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ