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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第3章 アストリア王国編
51/295

50 至上の花

R15 言葉だけでそういうシーンはないです。

「叔母様が仰るほど、今はもう遊んでいませんよ」


 ジェイクは一応否定しておく。


 たしかに、彼が女性に優しい言葉を囁けば、いつでも女性は媚薬でも嗅がされたかのように、うっとりとしなだれかかってきた。

 そうでなくても、女性の方が勝手に彼に惚れ、一晩だけでも愛してほしいと、自らジェイクに身体を預ける女性も多かった。複数の女性が彼を待ち構えていて、まとめて愛し合ったこともある。


 アストリア王国では、宗教上の理由から未婚女性の処女性が重視され、結婚前に処女を失った女性は幸せな結婚ができないとされていた。しかし、それはおとぎ話のようなもので、時代の流れとともに守られなくなってきている。その話を信じているのは、恋を知らない夢見がちな乙女くらいだろう。


 彼からしてみれば、お互い合意の上で楽しんでいるならば、それでいいのではないかと思っている。今は、若く美しい未亡人数人と後腐れのない関係を続けているだけだから、辺境伯夫人が言うほど遊んでいるつもりはない。


「あなたが結婚しないと、侯爵家はどうなるのかしら? 後継ぎがいないと断絶しちゃうわよ。どこからか養子でももらうつもり?」

「大丈夫ですよ」


 彼は余裕の様子で笑った。


「……まさか、ジェイク、隠し子でもいるんじゃないでしょうね?」


 辺境伯夫人が胡乱(うろん)な目で彼を見る。


「違いますよ。報告できるときになったら、きちんと報告しますから」


 彼には、もうすぐ手に入る至上の花があった。ほかの女がすっかり色褪せて見えるような、一目見ただけで心奪われた美しい花。清らかで可愛らしい天使のような彼女が、あと数日もすれば自分のものになる。

 多少強引なやり方だと我ながら思うが、手に入れてしまえば、後は昼も夜も存分に甘やかし、愛してやる自信があった。身も心も蕩けさせ、自分なしではいられなくしてやろう。そうしたら、思い切り自分の(たけ)りを、彼女にぶつけてやるのだ。早く美しい花を手折り、自分の手元に置いてしまいたい。


「そうよ。クルーガー侯爵家があなたの代で断絶なんて、あなたのご両親に申し訳がたたないわ」


 彼の名前はジェイク・クルーガー。マリアを狙う「クルーガー侯爵」、その人だった。

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