表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第3章 アストリア王国編
46/295

45 風のいたずら

 今日のカヌレは、朝から風が強かった。

 ルーファスが馬車の準備をしている間に、マリアがブラックに餌をあげていると、一陣の強い風が吹き、押さえる間もなく、マリアの帽子が風にさらわれてしまう。


 マリアの帽子は風に吹かれて舞い上がり、道路の方に飛んで行った。するとそこに運悪く、ちょうど馬車が通りかかる。馬は驚いて(いなな)き、前足を高く上げて立ち止まった。

 彼女の帽子は、石畳の道路の中央にポツンと落ちていた。


「気をつけろ!」


 御者はマリアをすぐさま大声で怒鳴りつけた。しかし彼女の姿を見た途端、そのあまりにも人間離れした楚々とした美しさに見惚れてしまい、次の言葉が出てこない。

 マリアは急いで帽子を拾い、心から謝罪したが、御者は顔を赤くして下を向き、なんだかよくわからない返事をしただけだった。


 マリアが止めてしまった馬車は、素朴なカヌレに不似合いな、明らかに貴族の所有のものだとわかる馬車だ。マリアは不安に襲われ、目の前にある繊細な装飾の箱馬車を見つめる。

 中に乗っている貴族によっては、平民が貴族の行く道を邪魔したとして、ひどい仕打ちをすることもあるという。マリアは今や貴族令嬢ではないのだ。


 すると馬車の中から、初老の貴婦人が「何があったの?」と顔を出した。白髪まじりの茶色の髪を上品に結い上げた貴婦人は、マリアを興味深そうに眺める。

 御者がことの顛末を説明している間、マリアは帽子を胸に抱え、不安に俯いていたが、貴婦人から顔を上げるようにと声がかかった。

 マリアは言われた通りに顔を上げ、貴婦人と控えめに目を合わせると、彼女は一瞬だけ驚いた顔をした。


「風では仕方ないわ。次から飛ばされないように気をつけなさいな。……ところであなたはこの街の子ではないわよね? どこのお嬢さんなの?」


 貴婦人からの突然の質問に、マリアはどう答えれば良いかわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ