42 一緒に寝ましょう
カヌレは小さな街なので、当然のことながら宿泊施設も少ない。2人は宿探しに奔走せざるを得ず、ようやく見つかった宿もシングルルームしか空きがなかった。けれど、もう夜も更けてきて、ほかに宿が見つかるとも考えられないことから、仕方なくそこに泊まることに決めた。
夕食を済ませて部屋に入ると、当然ベッドは1つだけ。さすがにお互いに気まずくて、部屋に沈黙がおちる。
先に沈黙を破ったのはルーファスだった。彼は「安心しろ」と言いながら、マリアの頭を優しく撫でた。
「マリアはベッドに寝てくれればいい。俺はソファーで寝るから」
「そんなのダメ! ルーファスがベッドで寝て? 私の方がだいぶ背も小さいのだから、私はソファーでも大丈夫よ」
マリアからすれば、馬車に揺られているだけの自分と違い、ここまで自分を守ってくれている彼を何とかして休ませてあげたかった。それに身長から考えても、ルーファスにソファーで寝てもらうのは明らかに大変そうだ。
「マリアをソファーでは寝かせられない」
「私だって」
お互い譲れない言い争いをしているうちに、マリアは良いことを思いついた。ルーファスが寝たら自分がこっそりとソファーに移動すればいい。
「じゃあ一緒に寝ましょう? ちょっと狭いけど、寝られないこともないし……」
マリアのとんでもない提案を「……それはダメだ」とルーファスは即刻拒否した。




