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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第3章 アストリア王国編
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41 ただの子犬ではなかった

 カヌレの街は街道から少し離れているため、今までの街にくらべると、こじんまりとした素朴な街だった。街全体にものんびりとした雰囲気が流れている。

 

 街に一軒だけ存在する動物病院で、早速ブラックを診察してもらったところ、痩せてはいるが特に大きな病気はないというお墨付きをもらった。

 しかしそれと同時に衝撃の事実が判明した。マリアたちは、ブラックのことを毛並みは珍しいものの、あくまでもただの子犬だと思っていたが、どうもそうではないらしい。


 ベテランの男性獣医師はブラックを見るなり、驚いたように言ったのだ。


「あれ? これ犬じゃなくて、フェンリルだな」


 マリアとルーファスはその意味がわからず、顔を見合わせていると、医師は笑いながら教えてくれた。


「神話のフェンリルじゃなくて、そういう種類の動物だよ。犬や狼の親戚みたいなものだ。犬や狼よりずば抜けて賢いから、先人たちが畏敬の念をこめてそう名付けたらしい。この不思議な毛並みと金色の目が特徴だよ」


 医師は興味津々のようで、マリアにブラックを拾った場所を尋ねてきた。彼女が宿の近くで拾ったことを説明すると、医師は饒舌に語った。


「フェンリルは非常に珍しい生き物なんだ。どうして街にいたのかはわからないが、そもそもアストリア王国の深い森の中にしか棲んでいない。人にはなつかないし、まだ生態もよくわかってないんだよ。僕も長年この仕事をしているが、ほとんど見たことがないくらいだ」


 そして「僕も飼いたいな」と物欲しそうな目でブラックを見たので、ブラックはその目に危険な臭いを感じたのか、不安そうにマリアにしがみついた。


 その帰り道、マリアとルーファスは彼らの目の前を弾むように歩く、小さな生き物を眺めていた。


「ただの犬じゃなかったんだな」

「フェンリルなんて、初めて聞いたわ」


 2人の会話を知ってか知らずか、ブラックは振り返ってご機嫌に吠えた。

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