40 道中の会話(カヌレまで)
今は、街道沿いの大きなリンデルの街を敢えて避け、そこから少し離れたカヌレの街を目指しているところである。
いつものように幌の中から顔を出し、マリアはルーファスに話しかけた。彼女は腕に黒い子犬を抱えている。
出発前に洗ってやったこともあり、毛並みはすっかり整って、ふわふわになっていた。
洗っているときに、この子犬は男の子で、ただ黒いと思っていた毛色は、光の加減によって、青や緑、金と違う色に見える非常に珍しい色であることに気がついた。
まるで、黒い毛並みに宝石のオパールをキラキラと散りばめたようだ。
「ルーファス、この子の名前を決めましょう?」
「マリアが見つけたんだから、つけてやればいい」
「うーん、不思議な色だけど、パッと見ると黒いから……『クロ』とか?」
「そのままだな」
「少し変えて『ブラック』は?」
「『クロ』よりは、そっちの方がいいな」
マリアは、黒い子犬を自分の目線まで優しく抱き上げ、話しかける。
「今日からあなたは『ブラック』よ、よろしくね『ブラック』!」
マリアのその言葉に、子犬は「アォン」と尻尾を元気よく振りながら、返事をするかのように吠えるのだった。




